木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

EVとインプライドオッズと

インプライドオッズについての記事を3つほど書いて、色々なコメントや感想を貰って、それをフォローしてないエアリプも含めて少し追ってみて、色々思ったことがあるので、背景にある新しい考え方も含めて書きます。

 

最近の記事で、22はインプライドオッズがマイナスである、という趣旨の文章を書きました。なので、レイズに対しては降りるのが自然だよという内容です。

ちなみに、そういう趣旨で言うところのインプライドオッズが一番高いハンドはAAです。プリフロップで一人にコールされた時の勝率はざっくり85%、というのは知っている人が多いとは思いますが、フロップでポットが7bbになったとして、7bbの85%=5.95bbが平均で獲得できるのかというと、違いますよね。フロップ以降で色々なプレーをして、追加で勝ったり負けたりするわけです。

AAは降りられないから大きく負けて小さく勝ちやすいから嫌いだ、とか言う人も多いですが、大きく負ける分を差っ引いても、実際5.95bbより平均で5から10bbくらいはプラスを上乗せ出来るのが自然です。

 

エクイティーという言葉があります。直訳すると期待値。

これ、文脈で使われる意味が二通りあります。

元々の意味は、ポットが100ドルあって、勝率65%だとしたら、エクイティー(ポットエクイティーという言い方で明示することもあります)は

ポット×勝率で65ドル。

しかし、2つ目の意味として、単純に勝率の意味でエクイティーと使うことも多く、最近は単にエクイティーと言った時にこちらを指す事が多い気すらします。

 

そして、最近のNLHEでは、エクイティーリアライゼーション(equity realization)、期待値実現、という概念があります。

これは、大ざっぱに言うと、エクイティー+インプライドオッズ、というものです。

例えば、100bb持ちの22で7bbのポットに参加したとします。

相手のレンジに対する勝率は45%だとすると、7×45%=3.15bbがこちらの取り分と考えるのが単純なエクイティーです。

しかし、実際は22はインプライドオッズが非常に悪いため、トータルで平均して2.8bbしか返ってこないとしましょう。その時、realizeされたequityは40%(2.8bb)、というような言い方をします。

 

NLHEでは、ハンドの種類が非常に少ない(5s6hと5h6sを別物としても、1326通りしかないのです!)ので、レンジに対するハンドの勝率ではなく、最初からrealized equity(現実化された期待値)で考えてポットオッズを考えましょう、という考え方なのです。

もちろん概念としては分かりますし、それどころかかなり優秀な概念だと思います。

しかし、自分はほとんど使ってません。その理由として大きいのは、自分は今はNLHEよりPLOの方がかなり多くプレーしてます。PLOではハンドの組み合わせが膨大すぎて、それぞれのハンドに対してrealized equityを覚える(覚えなくてもいいけどあらかじめ見積もる)ということが不可能です。

なのでPLOでは、レンジに対する勝率を見積もり、ポットオッズを考え、そこでインプライドオッズがどの程度であるかをその場で考える(=realized equityを計算する)必要があるのですが、その場でインプライドオッズを考えないといけないのだから、realized equityとしてあらかじめ覚えることは無理だし、そもそもその場で考えているのだからrealized equityを使わなくても同じようなことをやっているわけです。

 

そして、ブログ記事としての扱いですが、自分はこの記事を、色々な概念を理解しているプレーヤーにより深く理解してもらう為に書いているわけじゃなく、より広い人に今の考え方を知ってもらいたくて書いてます。そして、多くのポーカープレーヤーは、インプライドオッズという言葉や概念は聞いたことがあると思うけど、エクイティーリアライゼーションなんて初耳でしょう。なので、今後も極力平易な単語だけしか使わないつもりだし、単語の紹介はしましたが、今後もエクイティーリアライゼーションがこのブログに登場することは(将来この単語が一般的になってない限りは)ほとんどないです。

 

 

NLHEを専門で打ってる、プロやプロにそれに準ずるプレーヤーたちが、勝率+インプライドオッズ、に分けることに違和感があるらしい。それどころかポットオッズと言ったら最初からrealized equityだけを指す。

というようなことを知って、自分としてはちょっとしたカルチャーショックのように感じて、面白いなと思ったので一つの記事にしてみました。