木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

ICMに基づきすぎるプレイは期待値を大きく落とす

kihara-poker.hatenablog.com

 

こちらの記事の続きです。

前回の記事にて、

「ICMとは、順位を決定する時に、誰とぶつかったら飛ぶかなどを全く無視した順位決定のmodelである。」

と書きました。ではこのことが結果にどういう影響を及ぼすのでしょうか。それは、

 

「ぶつかった時にショートスタック側のみ一方的に飛ぶという可能性を考慮できていないモデル」

「ショートスタックの期待値が、本来より高く表示されるモデル」

 

であると言えます。

「そんなことはない、その証拠を出せ」

と言われたら、その証拠はありません。なので、自分の仮説とでも言った方が良いかもしれませんが、自分は上に書いたことおよびたくさんのトーナメントをプレイした経験を根拠にそう言ってます。

 

このスタックで、ブラインドは500-1000、アンティはBBアンティなら1000だけど、ここでは全員から250ずつという計算にしてます。賞金分布は、

1位100

2位70

3位50

4位35

というファイナルテーブルの残り4人の状況を想定しています。

 

これのオールインオアフォールドの計算結果はこちら↓

 

次に、勝者総取り設定で、チップEVのみにしたオールインオアフォールドの計算結果はこちら

 

チップ期待値のみだったら36.7%オールインしているボタンが30.9%までタイトになり、何よりチップ期待値のみだと75.3%もオールインすべきSBが49.6%まで減っています。

 

これは当然、4位から3位への賞金上昇、3位から2位への賞金上昇を期待したものですが・・・

でもこの結果を見て、本当に信じられますか?

特にSBは、フォールドしたところで、自分自身が4位の最有力プレーヤーであるということに変わりはありません。にも関わらず、オールインすべきハンドが75%から50%まで25%も減るというのです。

 

更にこちらの画像↓

 

ハンド前後での期待値の増減を現したものです。

ビッグスタックのBBの期待値を見てください。何と、BBが通過する前後で殆ど期待値が変わってません。当然ですが、他のポジションからはこのビッグスタックは、期待値を増やすことが出来るでしょう。とすると、1周後にはこのBBの期待値は当然上がってます。つまり、ICMによる計算結果はビッグスタックを過小評価するのです。

 

 

ではなぜこういうことが起こるのか。

 

「ICMはショートの期待値を高く見積もりすぎる」

「その瞬間のハンドで飛ぶリスクを過大評価し、その瞬間で稼ぐチップを過小評価する」

「タイトすぎるレンジが表示される」

「そのレンジによって、よりショートで生き残ることになる」

「より飛ぶリスクが高く評価されてしまう」

 

という悪循環に陥るのです。

この悪循環がなくても、単純に損なプレイが表示されてるのに、この損は将来にわたって何度も連続で払わざるを得ないものなのです。

この10bbのショートスタックのSBは、ハンド前後の期待値の表から、ハンド前で20.46%、3位の賞金である19.61%より高く表示されています。

飛ぶとこれが0になるので、リスクが大きい。だからたくさん降りる。

でも、本当にそんなプレイをしていて、期待値として3位より上になりますかね?

そもそもおり続けていても4位の最大の候補であるわけで、15bbの人が先に飛んでくれたとしても圧倒的な3番手になるわけです。4位になった分を、2位以上の賞金上昇でカバーできるという数字なのですが、自分はそういうイメージはわきません。

 

ここでもう一つ、チップチョップという概念があります。

確定した分を引いた、残った賞金を、チップ量で山分けするという計算ですね。

こちらは逆に、チップを持っている人が有利になりすぎる分配で、圧倒的なスタックを持っていれば、優勝賞金より高い金額が表示されることも多々あります。

 

その計算でいけば、4位の人のチップチョップ

(1-0.1373×4)×10000/(10000+15000+20000+40000)+0.1373=0.1903%

 

3位の賞金より小さい数字が表示されました。

もういう「もし」を計算機で計算はできないのですが、負けて失うとしてこの数字を仮定して計算させたら全く異なる計算結果が出るはずです。

 

 

軽くまとめると、

ICMが表示する計算結果はショートの期待値を高く見積もりすぎである

それによってショートのオールイン負けリスクの過大評価につながっている

それはショートスタックがショートのまま生き残る結果に繋がり、さらなるオールイン負けリスクの過大評価になる(もっとショートになるから、1チップ当たりの過大評価が大きくなる)

これは負の連鎖であり、ICMの計算結果に基づきすぎるプレイは期待値に甚大な悪影響を及ぼすことが多々ある

 

のです。

 

次回(最終回)は、どういう見積もりが適正なのか、それを、

・賞金期待値

・プッシュ側のプレイ

・コール側のプレイ

・バブルファクターの推移グラフ

などにおける自分の経験則に基づく仮説を書こうと思います。