木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

インプライドオッズについて

インプライドオッズってかなり勘違いされてる概念の一つだと思います。

インプライドオッズとは、直訳すると「隠れたオッズ」で、ポーカー的な概念としては、将来のストリートで見た目のオッズ以上にプレーで得を出来ると見込める時のその得のことを言います。

 

ところで、

「ポケットペアはセット引いたら大きく取れるからインプライドオッズが大きい」

というような言い方をしますよね。それって本当なのでしょうか?

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ここでは100bb持ちでアンティが無く、レークもないキャッシュゲームを想定します。

標準的なプレーをするカットオフが3bbにオープン。

自分はボタンでハンドを見ると22。コール。

SB,BBはフォールド。

 

フロップ38Kr (ポット7.5bb)

 

CO5bbベット。フォールド。

 

これって、めちゃくちゃ良くある進行ですよね。

しかし!

相手がヒットしていない時、こちらは75%の勝率があります。

7.5bbの75%は5.6bb。それをフォールドすることで放棄してしまったことになります。それどころか、勝率25%しかない相手がベットしてきているので、本来ならレイズすれば相手はフォールドせざるを得なく、その時12.5bbを獲得出来るべきなのです。なお、2枚のカードがフロップでペアになる確率はおよそ3分の1です。

相手がヒットしていないことを考えてフロップでコールしたとしましょう。

 

ターンJ (2枚目のスート。ポットは17.5bb)

 

CO12bbベット。

 

うーん・・・

 

これ、勝率75%ある可能性が2/3もある!と思ってフロップでコールしたにも関わらず、ターンでベットされて降りるのでしょうか。それともターンもコールする?

そんなシチュエーションになりたくないからフロップで降りる?

これって、インプライドオッズがあるからと言ってコールしたはずなのに、フロップ以降でより得をしてるのはむしろボタンのプレーヤーになってないでしょうか・・・

 

 

え、なになに?

「セットを引いた時の得が考えられてない!」

という声が聞こえてきました。じゃあ、セットを引いたときのことを考えてみましょう。

 

フロップでセットを引ける確率は1/9です。

フロップ28K (7.5b)

だとしましょう。

相手の2枚が8かKのペアになってる確率は1/3ではなく1/3の更に2/3で2/9です。だって、フロップでペアになる確率の1/3というのはフロップで3枚出る前提であって、8かKだと2枚しか出てないのと同じなのですから。

 

相手がフロップで5bbベット。レイズ17bb。

相手がKか8を持ってたらオールインまでしてくれる。8かKを持ってなかったら降りるとして(この仮定は99からQQを無視したとしても、こちらにとってとんでもなく都合がいい仮定なのは明らかですよね?)

 

8/9×(-3)+1/9×2/9×101.5+1/9×7/9×9.5

=-2.67+2.51+0.83=+0.67bb

 

こんな無茶苦茶な相手を想定して、セット引いた時に全部取れる前提で+0.67bbです。でもこれ、フロップで相手もセットを引いてオールイン負けしたり、ランナーランナーで負けたりすることを一切想定してないし、そもそもブラインドから3ベットされることも無視してます。そこまで無茶苦茶な仮定なのに、+0.67bbです。

こんな相手ならプリフロップで4bbにされててもコールで良さそうな気がしますよね?相手が4bbにしてたら、最初の-3を-4にすればよく、結果は-0.22bbです。3ベットされず、セカンドペアで100bb入れてくれる相手とレークなしでプレーしてるのに!!!

ところで、ブラインド以外からは当然、降りたら±0です。こんな無茶な相手に対しても降りても降りてもいいわけです。

これは何故か。それは、相手がフロップでヒットしてない状態(=勝率25%)でベットしてそのままポットを獲得出来る時の利益が大きすぎるのです。

この相手の利益って、将来のストリートで得られる利益ですよね。こちらの視点から見ると、プリフロップ時点で、フロップで失うインプライドオッズなのです。

つまり22は、フロップでセットにならなかった時のインプライドオッズのマイナスがでかすぎるわけです。

 

結論としては、小さいペアでインプライドオッズが高いというのは、セットを引けたときだけを考えすぎている状態で、本当のインプライドオッズはかなり小さい、それどころかインプライドオッズがマイナスの可能性さえあると言えるのです。