木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

教えると言うこと

kihara-poker.hatenablog.com

最近の記事で、エクイティーリアライゼーションという話題を書きました。

この単語の説明を書いている時に、大学1年の時の数学の授業の一つの風景を思い出しました。

 

複素関数論の授業で、

「コーシーの積分定理」

というのが出てきて、それを証明しましょう、という話なのですが、突然「グリーンの定理」なる定理の存在を持ち出してきて、それをさらっと全くわかりようがない説明で数分で証明を記述し、グリーンの定理を適用したらコーシーの積分定理が証明できました、という授業の1風景です。

 

これ、今から振り返ると、教え方として非常に良くない、と思うのです。

もちろん定理としては正しいし、内容も間違えてないです。また、証明するのもこの方法が一番速いのも間違いないでしょう。

でもね、それなら教科書にも書いてあることです。教えるべきことは、この定理はどういうニュアンスの意味があるのか。どういうところで使えるのか。それを先生自身の言葉で説明することだと思うのです。

証明も、そこまでで習った範囲ですごく遠回りして行うものの方が良いと思うのです。グリーンの定理を使わないと証明するのが困難なのであれば、証明するならばこういうものがあるので数年後に確認してみてね、とサラッと紹介する程度で良いと思うのです。

 

 

なぜこんな1風景を思い出したかというと、

「COの30%レンジのオープンにボタンから22は降りたほうが良いよ」

という説明をするにあたって、エクイティーリアライゼーションという概念を導入し、

「レンジ(相手のハンドの可能性)全体に対する勝率は45%かも知れないけど、リアライズされたエクイティーは40%しかないからオッズに合わない」

という説明をするのって、大学1年生の時に受けた数学での授業での説明とすごくかぶると思うのです。

この問題での説明の場合、なぜリアライズされたエクイティーが元の勝率より下がるかという説明もないですが。そもそも、リアライズドエクイティーなんてスタックやポットへの参加人数にものすごく依存するから、いくらって言いようがないんですけどね。

 

説明というのは、どんなに遠回りであっても、説明される人が理解できる範囲の言葉で書かないといけないのです。

ブログは読み手が不特定多数なので、ある程度レベルを想定しないと書きようがないです。自分の書く文章は、ポーカーを週1で1年位やってます、位の人が理解できるレベルを最低レベルとして想定してます。

それでも、一部というかかなりの割合の人には難しすぎると思うでしょうし(特に数式が出てくる部分とか)、一部の人には冗長すぎると思うかも知れません。

難しい内容を議論したかったら、書かないといけない考察内容が増えるし、そこを理解するにはこれくらい前提でいいよね?というものが増えるので、難しい内容を簡単に説明するというのは原理的に非常に困難です。簡単に説明や理解が出来るのなら、そもそも難しい内容と言われないですからw

でも、そこそこ難しい内容を、多くない前提知識だけで「算数」の側面から見て考察して行くのが自分の得意な思考方法です。それを多くの人に共有できたらと思ってます。

算数部分についていけないと言われても、塾の個人指導的な場所で聞かれたら答えられますが、こういうブログではある程度は読み飛ばして下さい、としか言えないので、そこは申し訳ありませんが・・・

 

EVとインプライドオッズと

インプライドオッズについての記事を3つほど書いて、色々なコメントや感想を貰って、それをフォローしてないエアリプも含めて少し追ってみて、色々思ったことがあるので、背景にある新しい考え方も含めて書きます。

 

最近の記事で、22はインプライドオッズがマイナスである、という趣旨の文章を書きました。なので、レイズに対しては降りるのが自然だよという内容です。

ちなみに、そういう趣旨で言うところのインプライドオッズが一番高いハンドはAAです。プリフロップで一人にコールされた時の勝率はざっくり85%、というのは知っている人が多いとは思いますが、フロップでポットが7bbになったとして、7bbの85%=5.95bbが平均で獲得できるのかというと、違いますよね。フロップ以降で色々なプレーをして、追加で勝ったり負けたりするわけです。

AAは降りられないから大きく負けて小さく勝ちやすいから嫌いだ、とか言う人も多いですが、大きく負ける分を差っ引いても、実際5.95bbより平均で5から10bbくらいはプラスを上乗せ出来るのが自然です。

 

エクイティーという言葉があります。直訳すると期待値。

これ、文脈で使われる意味が二通りあります。

元々の意味は、ポットが100ドルあって、勝率65%だとしたら、エクイティー(ポットエクイティーという言い方で明示することもあります)は

ポット×勝率で65ドル。

しかし、2つ目の意味として、単純に勝率の意味でエクイティーと使うことも多く、最近は単にエクイティーと言った時にこちらを指す事が多い気すらします。

 

そして、最近のNLHEでは、エクイティーリアライゼーション(equity realization)、期待値実現、という概念があります。

これは、大ざっぱに言うと、エクイティー+インプライドオッズ、というものです。

例えば、100bb持ちの22で7bbのポットに参加したとします。

相手のレンジに対する勝率は45%だとすると、7×45%=3.15bbがこちらの取り分と考えるのが単純なエクイティーです。

しかし、実際は22はインプライドオッズが非常に悪いため、トータルで平均して2.8bbしか返ってこないとしましょう。その時、realizeされたequityは40%(2.8bb)、というような言い方をします。

 

NLHEでは、ハンドの種類が非常に少ない(5s6hと5h6sを別物としても、1326通りしかないのです!)ので、レンジに対するハンドの勝率ではなく、最初からrealized equity(現実化された期待値)で考えてポットオッズを考えましょう、という考え方なのです。

もちろん概念としては分かりますし、それどころかかなり優秀な概念だと思います。

しかし、自分はほとんど使ってません。その理由として大きいのは、自分は今はNLHEよりPLOの方がかなり多くプレーしてます。PLOではハンドの組み合わせが膨大すぎて、それぞれのハンドに対してrealized equityを覚える(覚えなくてもいいけどあらかじめ見積もる)ということが不可能です。

なのでPLOでは、レンジに対する勝率を見積もり、ポットオッズを考え、そこでインプライドオッズがどの程度であるかをその場で考える(=realized equityを計算する)必要があるのですが、その場でインプライドオッズを考えないといけないのだから、realized equityとしてあらかじめ覚えることは無理だし、そもそもその場で考えているのだからrealized equityを使わなくても同じようなことをやっているわけです。

 

そして、ブログ記事としての扱いですが、自分はこの記事を、色々な概念を理解しているプレーヤーにより深く理解してもらう為に書いているわけじゃなく、より広い人に今の考え方を知ってもらいたくて書いてます。そして、多くのポーカープレーヤーは、インプライドオッズという言葉や概念は聞いたことがあると思うけど、エクイティーリアライゼーションなんて初耳でしょう。なので、今後も極力平易な単語だけしか使わないつもりだし、単語の紹介はしましたが、今後もエクイティーリアライゼーションがこのブログに登場することは(将来この単語が一般的になってない限りは)ほとんどないです。

 

 

NLHEを専門で打ってる、プロやプロにそれに準ずるプレーヤーたちが、勝率+インプライドオッズ、に分けることに違和感があるらしい。それどころかポットオッズと言ったら最初からrealized equityだけを指す。

というようなことを知って、自分としてはちょっとしたカルチャーショックのように感じて、面白いなと思ったので一つの記事にしてみました。

 

スモールペアの扱い 補足

kihara-poker.hatenablog.com

 

前回、スモールペアの扱いの記事を書きました。

 

横澤君から指摘があって、読み直してみると確かに表現が良くない点が多々あったので補足記事です。

 

まず、記事の主題として、22をコールでプレーすることの難しさを説明したつもりでした。

「セットを引いたらインプライドオッズがあるから。セットを引けなかったらフォールド」

という理由でのコールするのは如何に割に合わないか。

 

また、セットを引けなくても簡単にはフォールドしないのだとしたら、どういうプレーをせざるを得ないか。それって大変だよね?と。

セットを引いたときとのバランスを取ってブラフレイズしたり、フロートしたり。

でも、そういうプレーをしたいのなら、勝っているか負けているかの判断がつきやすいスーテッドコネクターの方がまだ向いているのです。

 

そもそも、そういうブラフをしたりする前提なのであれば、プリフロップからしたほうがまだいいんです。相手が3ベットに70%以上降りるのであればその瞬間に3ベットが割に合うし、コール止まりならアグレッションとポジションを持った上でフロップ以降をプレーできます。

 

「え?22で3ベットするの?それはちょっと・・・」

ともし思うのなら、22は単にフォールドするのがベストなのです。

(22をプレーするスタンダードなプレーが3ベット、という表現を前回の記事で使ったのですがこれだと、フォールドしないのならコールより3ベットの方が良い、というニュアンスに受け取られづらいかなと思いました。反省)

 

この記事のシチュエーションでは、22はプリフロップで何もせず単にフォールドするのが最善であるケースがかなりの割合を占めます。

(前回の記事では、ここで、フォールドも有力、という言い方をしてしまったのは良くなかったですね。フォールドが最有力。ここも反省)

相手と状況に応じて、3ベットをたまに混ぜるのは良いでしょう。トーナメントでアンティがあってオープンレイズ額が小さい場合はコールも有力になります。しかし、100bbのキャッシュゲームにおいてはコールすることは非常に割に合わないのです。

そしてその理由としては、ハンドの強さそのものというより、22というハンドがフロップ以降のプレーが難しいハンドだからです。勝率75%の状態で降ろされたり、勝率9%の状態でコールしたりさせられてしまいます。プレイアビリティー(プレーのしやすさ)が低いとか悪いとかいう言い方をするのですが、インプライドオッズという言葉を使うのなら、

「インプライドオッズがマイナスだから」

なのです。

 

スモールペアの扱い インプライドオッズからの続編

kihara-poker.hatenablog.com

インプライドオッズについて、の記事で、以下のようなコメントを頂きました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

木原さん、WSOPのエピソードなど興味深い投稿をありがとうございます。楽しく読ませていただいています。 ところで、私はオンライン、アミューズどちらもプレイしているしがないポーカープレイヤーですが、今回のエントリを読んでいて、書かれた通りにプレイすることはむしろレアケースではないかと思ってコメントいたします。 まず、最初のケースですが、K83rのフロップで22を持っているとき、自分はフローティング狙いでコールすると思います。超ドライなフロップなのでオリジナルレイザーは何を持っていてもCBを打ってくるため、22で勝っている可能性も十分にあるというのが理由です。ターンのJは少し嫌なカードですのでベットされたらフォールドすると思いますが、もしローカードならフローティングの初志貫徹でブラフレイズをすると思います。 続いてセットを引いたK82rの場合ですが、これもドライボードでまくられたり相手のアクションを殺してしまったりするカードがないので、フロップはコールし、ターンでレイズまたはベットのラインを取ると思います。 いかがでしょうか。もし、何か間違っているところがありましたら、ご指摘いただければ大変幸いです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

しがないプレーヤーと謙遜されてますが、コメントを読む限りかなり強い方だと思われます。

そう、22でプリフロップをボタンからコールしてフロップがK83rのようなフロップになった場合は、コメントを頂いたようにプレーするのが自然なのです。

K82rの場合は、それとバランスを取ってスロープレーしたりします。

また、K83とK82のどちらでも、フロップで2.6倍程度にレイズするのも有力です。

 

いずれの場合でも、22というハンドをセットを引いた時のインプライドオッズが・・・というような概念でプレーしているわけではないというのが分かるかと思います。では、どういう考え方なのかというと、22というハンドの勝率がそれなりに高いことを利用しているのです。

 

COの参加レンジが30%だとしましょう。33からAAまでのペアを持たれているのは0.45%×12=5.4%

つまり、5.4%に対して勝率20%、残りの25%に対して勝率50%。トータルで45%ほどの勝率があるのです。3bbの投資で7.5bbのポットに参加することを考えた場合、単純に勝率が足りているのでオッズコール、という感覚に近いのです。

また、フロップ以降のプレーによっては44や55を降ろせるかも知れないし、ブラフをして捕まるかも知れない。セットでがっつり取れるときもあるかも知れないし、相手に降ろされてしまうかも知れない。

プリフロップの段階からみたインプライドオッズはプラスかマイナスか分かりません。しかし、少なくてもポジションを手にしてプレーできるのは間違いないので、ここで相手のベット率や相手から見たこちらのイメージなどを考えながらプレーしたとすると、十分戦えるでしょう。まさにポーカーですね!

つまり、22の価値は、HUにおける勝率の高さに依るのです!

しかし、難点があります。ブラインドが降りると分かっていれば確かにコールは損にならないのですが、ブラインドに3ベットされるとほとんど降りるしか選択肢が無くなってしまうという点です・・・

 

では、そもそも勝率の高さを生かしてプレーするのであれば、最初から3ベットで入ったらどうでしょう。いずれにせよ戦うことになるのであれば、プリフロップから戦おうという感じですね。これが22をプレーする一番スタンダードなプレーじゃないかなと思います。

ただし、3ベットを多くすると、相手に対応されて4ベットされることも増えるでしょう。そうなったら今度は3ベットをモンスターハンド側に寄せてプレーしていきます。

まさにポーカーですね!

 

また、プリフロップで単にフォールドするのも有力です。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

22のようなスモールペアはとにかく扱いが難しいのです。

相手がヒットしていれば絶望の9%、ヒットしていなければ75%。

セットになったときだけ大きくプレーしよう、という「セットマイン」の考え方は、勝率75%のハンドを降ろされ続けるのが痛すぎるため、戦略として古く、トータルでは全然利益的ではないのです。それならば単に降りる方が自分としてはおすすめです。

 

「テルを見抜け」レビュー

パンローリング社から出版された

「テルを見抜け!」

読了。いつも献本いただき、ありがとうございます。

 

この本の特徴としては、

「ここはこう判断すべき」

というような書き方を一切していない点です。

テルは、いわゆる無意識に行われている「癖」なので、一般的なものはあるとはいえ、全員に当てはまるわけじゃありません。それがある意味テル読みの限界と言えるものですが、この本ではそのことを認めた上かつ戦略の部分が一番大切だとしつつも、副次的な読みの要素としてテルを取り入れることを推奨してます。また、その点に自分は非常に同意します。

また、この本の見出しに

「観察と行動がもたらす優位性
 10~30%はウインレートが向上する技術」

とありますが、テルをしっかり観察してプレーすることで、30%以上ウインレートが向上する人もいるんじゃないかと自分は感じますし、テル要素に関して無頓着な人がテル要素を正しく意識してプレーできたら、10%しかウインレートが向上しないということは無いんじゃないかと感じます。この手の本の見出しは誇大表現になってることが多いですが、こちらは非常に謙虚だなと感じますw

 

 

内容ですが、最初のページから106ページまで、かなり同意出来る内容です。

本でも何度も繰り返し書かれてますが、テルだと思ったことを鵜呑みにしないことが大切なのです。しかし、何回か確認した上で明らかにテルと判断出来たものに関しては利用しない手はありません。その中で本当にたくさんのテルが紹介されてます。

この本で紹介されている考え方で、個人的にとても大切で多くの人が意識出来ていないと思うのは、アクション前のテルとアクション後のテルは全く意味合いが違うということです。それについては是非本を手にとってみて下さい。

 

107ページから159ページですが、正直、飛ばして良いくらいですw

本は出版するに当たって、ある程度の分量にしないといけないのですが、そのためにページ数を水増ししようとして何とか書き足したものだというテルを読み取ることが出来ます!テルに詳しい人でも、テルは出してしまうことがあるのです!

160ページから172ページにかけては本題に戻る感じです。ここの部分は先に完成していたところなんだろうなという読みです。

 

174ページから201ページにかけて、ここは「ごまかしと小細工」という章ですが、テル的なアクションを意図的にやって相手を騙そうというような内容です。

そして、筆者自身がところどころ書いているように、これらはやらないほうが良いと自分も思います。自分の読みでは、ページ数を水増ししたいがために編集の人の提案で入れられた章であって、筆者本人はそこまで乗り気じゃなかったんじゃないかと思いますw

 

テル読みからの防御として有効なのは、自分がつい出してしまうテルを知っておき、その上で201ページにあるように、たまにそれを逆用することに尽きます。

フロップで3枚同じスートが来たら、フラッシュが完成してなかったらついハンドを見返す、というのは有名なテルですが、ハンドを見返してしまう代わりにフロップフラッシュが完成したときもハンドを見返すようにする、という風にするのが良いですね。

 

 

読み飛ばしていいところはあると書いたものの、ライブポーカーをする機会がある人は読んで損はしない良書だと思います。

 

 

インプライドオッズについて

インプライドオッズってかなり勘違いされてる概念の一つだと思います。

インプライドオッズとは、直訳すると「隠れたオッズ」で、ポーカー的な概念としては、将来のストリートで見た目のオッズ以上にプレーで得を出来ると見込める時のその得のことを言います。

 

ところで、

「ポケットペアはセット引いたら大きく取れるからインプライドオッズが大きい」

というような言い方をしますよね。それって本当なのでしょうか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ここでは100bb持ちでアンティが無く、レークもないキャッシュゲームを想定します。

標準的なプレーをするカットオフが3bbにオープン。

自分はボタンでハンドを見ると22。コール。

SB,BBはフォールド。

 

フロップ38Kr (ポット7.5bb)

 

CO5bbベット。フォールド。

 

これって、めちゃくちゃ良くある進行ですよね。

しかし!

相手がヒットしていない時、こちらは75%の勝率があります。

7.5bbの75%は5.6bb。それをフォールドすることで放棄してしまったことになります。それどころか、勝率25%しかない相手がベットしてきているので、本来ならレイズすれば相手はフォールドせざるを得なく、その時12.5bbを獲得出来るべきなのです。なお、2枚のカードがフロップでペアになる確率はおよそ3分の1です。

相手がヒットしていないことを考えてフロップでコールしたとしましょう。

 

ターンJ (2枚目のスート。ポットは17.5bb)

 

CO12bbベット。

 

うーん・・・

 

これ、勝率75%ある可能性が2/3もある!と思ってフロップでコールしたにも関わらず、ターンでベットされて降りるのでしょうか。それともターンもコールする?

そんなシチュエーションになりたくないからフロップで降りる?

これって、インプライドオッズがあるからと言ってコールしたはずなのに、フロップ以降でより得をしてるのはむしろボタンのプレーヤーになってないでしょうか・・・

 

 

え、なになに?

「セットを引いた時の得が考えられてない!」

という声が聞こえてきました。じゃあ、セットを引いたときのことを考えてみましょう。

 

フロップでセットを引ける確率は1/9です。

フロップ28K (7.5b)

だとしましょう。

相手の2枚が8かKのペアになってる確率は1/3ではなく1/3の更に2/3で2/9です。だって、フロップでペアになる確率の1/3というのはフロップで3枚出る前提であって、8かKだと2枚しか出てないのと同じなのですから。

 

相手がフロップで5bbベット。レイズ17bb。

相手がKか8を持ってたらオールインまでしてくれる。8かKを持ってなかったら降りるとして(この仮定は99からQQを無視したとしても、こちらにとってとんでもなく都合がいい仮定なのは明らかですよね?)

 

8/9×(-3)+1/9×2/9×101.5+1/9×7/9×9.5

=-2.67+2.51+0.83=+0.67bb

 

こんな無茶苦茶な相手を想定して、セット引いた時に全部取れる前提で+0.67bbです。でもこれ、フロップで相手もセットを引いてオールイン負けしたり、ランナーランナーで負けたりすることを一切想定してないし、そもそもブラインドから3ベットされることも無視してます。そこまで無茶苦茶な仮定なのに、+0.67bbです。

こんな相手ならプリフロップで4bbにされててもコールで良さそうな気がしますよね?相手が4bbにしてたら、最初の-3を-4にすればよく、結果は-0.22bbです。3ベットされず、セカンドペアで100bb入れてくれる相手とレークなしでプレーしてるのに!!!

ところで、ブラインド以外からは当然、降りたら±0です。こんな無茶な相手に対しても降りても降りてもいいわけです。

これは何故か。それは、相手がフロップでヒットしてない状態(=勝率25%)でベットしてそのままポットを獲得出来る時の利益が大きすぎるのです。

この相手の利益って、将来のストリートで得られる利益ですよね。こちらの視点から見ると、プリフロップ時点で、フロップで失うインプライドオッズなのです。

つまり22は、フロップでセットにならなかった時のインプライドオッズのマイナスがでかすぎるわけです。

 

結論としては、小さいペアでインプライドオッズが高いというのは、セットを引けたときだけを考えすぎている状態で、本当のインプライドオッズはかなり小さい、それどころかインプライドオッズがマイナスの可能性さえあると言えるのです。

 

 

 

LGBT問題について

withnews.jp

 

この記事を読んで、ちょっと色々思ったので書こうと思います。

ちなみにポーカー界にはLGBTを公言している人が結構多いので(Vanessa SelbstやJason Somervillなどが有名ですね)、自分はそういう人と付き合いも多く、かなり仲がいい人も結構います。

 

記事の中間位の

 

”変わらず明るい話しぶりなのですが、後半は、悩んでいるようでもあります。
 「理解しなければと分かっているのに」と。”

 

 

自分はこれがそもそもの誤りなんじゃないかと思ってます。

例えば、背が高い人は背が低い人の気持ちなんて分からないです。

運動能力が高い人は運動能力が低い人の気持ちなんて分からないです。

自分はどちらも、日本人平均より若干下、くらいなので、もっと背が低い人の気持ちや、もっと運動能力が低い人の気持ちも分かることは難しいとも思います。

すべての要素で平均より上、という人なんていないし、そういう人でも自分が平均より下の部分を理解して欲しいと思わないはずです。

そもそも、背や運動能力が高いことは背が低いことよりも「人間として絶対的に優れている」ことなのでしょうか?

「高い」「低い」という言葉を使わざるを得ないけど、高い=良い、なんて誰が決めたのでしょうか?

 

親しい人には自分のことを理解して欲しいとは思うけれども、背が低い人の気持ちを世間一般が広く共有しなければならないとは自分はとても思わないです。

同様に、LGBTの人の気持ちも、世間一般の人が理解しなければならない、ということでもないと思います。

 

背が低い人に対して、

「やーい、チビ」

と言って揶揄することは正しくないことである。これは多くの人が正しいと認めると思うのですが、心の中で(あの人は背が小さいから○○)と思うこと自体に罪は無いとも自分は思うのです。口や行動に出してはいけないというだけであって。

LBGT問題って、単にそれだけのことなんじゃないかなと自分は思うのです。

 

 

後半で「普通」について書かれてます。

「普通」って言葉って、どういう意味なんだろう。

辞書によると、

「いつ、どこにでもあるような、ありふれたものであること。他と特に異なる性質を持ってはいないさま。」

とのこと。LGBTは人口の5%から10%くらい。どの範囲からありふれたものと言うのかも難しいですが、1000人いたら50人から100人と聞けばありふれているとも言えるし、降水確率が10%の日に雨が降ったら普通じゃないことに感じるのでありふれていないとも言えるのかも。

どの程度ありふれているかを表す指標として標準偏差とか偏差値というものがあるけれど、5%から10%って偏差値で言うと66から70、もしくは34から30。普通?普通じゃない?うーん、難しい。少なくてもLGBTであることは「普通ではない」と言ってそこまで大きく間違いでもない数字だと思います。

これだけ書くとすごく勘違いされそうだけど、そもそも「普通=良い」「普通じゃない=悪い」なんて誰が決めたんでしょうか。

自分の職業はポーカープロです。

誰がどう見ても、「普通じゃない」職業です。誰かに中立的な意味合いで「普通じゃない職業だよね」と言われても「そうだね」としか言えないです。普通じゃないけど、自分は普通じゃないことをやっていることに誇りを持ってます。別に「普通の職業」を見下しているわけでもないし、単にベクトルが違うだけ。

ただそれだけですし、自分の職業が世間一般に正確に理解してほしいとも思わ・・・いや、少しは思うけど(笑)、別に理解されなくても別にしょうがないとは思ってますし、それで傷ついたりすることは無いです。だって、ポーカーや類似のゲームをやったことがない人にこの仕事を理解するのは無理だと思いますし、少なくても18歳当時の自分には絶対理解できないと思います。

 

LGBTについても、身の回りであまりそういう人がいないのであれば、その人にとっては「普通じゃない」んです。それを無理に「普通なことなんだと思わないといけない」と思うから難しい問題になるだけなんじゃないかなと、自分は思うわけです。

 

 

まとめると、「普通=良い」という刷り込みがあり、だから「普通じゃないなんて思ってはいけない」と思ってしまう事がことを難しくしているんです。

「普通かどうかと良い悪いは別物である」と心から思ってると、「普通じゃないけど、だから何?」くらいに思うようになるし、そういう感じに考えるのがいいんじゃないかなと自分は思います。