木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

ブラフとバリューベットの間(あわい)

http://kihara-poker.hatenablog.com/entry/2019/02/01/130849

 

この記事の続きです。

 

話がややこしくなるので、とりあえずヘッズアップ(残り2人)の話で。

 

ブラフとは、負けていると思っている時に、降りて欲しくてするベット、ですね。

一方、バリューベットとは、勝っていると思っている時に稼ぎたくてするベット、です。

 

この連載の第1回、フォールドエクイティーと全く一緒なのですが、例えば勝率80%、ポットが10bbのときに、ポットベットをしたとしましょう。

これは確実にバリューベットですよね。

そしてそのバリューは、10bb×0.2=2bbです。

これは、フォールドエクイティーそのものです。

(正確にはフォールドエクイティー

降ろせる確率×おろした時の利益

なのですが、この場合は相手はハンドが見えていて降りるべきなので)

お互いのハンドが見えていれば、相手は絶対にコールしませんが、実戦はハンドが見えていません。もし相手がコールをしたとすれば、

30bb×0.2=6bbが相手の取り分です。

相手は追加で10bbを支払うので、コールすることによる損失(比較対象はフォールドした場合)は4bbです。

勝率が80%でポットベットをしたら、相手が降りた場合、FEと等しい2bbのバリューが得られ、相手がコールした場合は、2bb+4bb=6bbのバリューが得られます。

当然ですが、相手がレイズしてきた場合は、もっと大きなバリューが得られます。

 

 

ところで、こちらの勝率が20%だとします。

そこで、ポット10bbに対して10bbのベットをしたとしましょう。

相手がフォールドした場合は、相手の取り分の8bbを0にすることが出来たので、8bb得します。

相手がコールした場合は、追加で増えたポット20bbの20%がこちらの取り分なので、4bb。10bbを投入して4bb返ってくるので、コールされた場合の追加のリスクは6bb。

これはブラフですね。そのリスクがメリットに見合うかどうかを考えます。

相手が降りる確率をpとすれば、

8bb×pがFE

6bb×(1-p)がコールされるリスク

分岐点のpは、以前の記事にも書きましたが、

リスク/(リスク+リターン)で表せます。ここでは

6/14=42.9%

降ろせれば、このブラフは肯定されます。

 

 

 

では、こちらの勝率が55%だったとしましょう。

ポットが10bbに対して10bbのベット。

ベットが無かった場合の相手の取り分は4.5bb。

相手がコールした場合は、追加で10bb払って30bbのポットに勝率45%で参加することになるので

30bb×0.45=13.5bb

追加で10bb投入するので、フォールドするより3.5bb得です。

それでも、こちらもベットをすることで、相手の取り分が4.5bbから3.5bbになるので、コールされると分かっていても若干ベットしたほうが得ですよね。降りてもらった方がもっと得ですが。

 

そう、勝率が50%前後だった場合、ベット/コールが入った場合もチェックで回った場合も、どちらも期待値は変わらないんですね。その場合は、降りてもらえる可能性がある分だけ、FEで得になるのです。そういうベットをセミブラフと呼びます。

 

イメージでは

0 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 1

  ブラフ            セミブラフ       バリューベット

 

そして、どこからブラフ、どこからセミブラフ、という明確な境界線があるわけじゃないです。勝率が30%以下なら大体ブラフと呼んで良いと思うし、70%以上なら大体バリューベットと呼んで良いと思います。勝率が48%から52%は完全なセミブラフでしょう。しかし、その間は

「バリューベット寄りのセミブラフ」

とか

「ブラフ寄りのセミブラフ」

という感じになるのでしょうか。

 

 

勝率が50%前後のセミブラフ、実はかなり打ち得です。

コールされてもリスクはほぼ無しで、相手が降りてくれたら非常に得をします。

このセミブラフの問題点としては、相手にレイズされた時です。

一般的にセミブラフと言うと、フラッシュやストレートのドローがある時を呼ぶことが多いです。

しかし、そうであるとは限らないのです。

 

前回のポストで書いた、AK、Q73rのボード。

これは相手のレンジに対して58%くらいあると見積もりました。

実際は相手はペアでコールしてくる可能性もあるし、ドミネイトしているハンドが出てくる可能性もあります。実際は平均で55%とかでしょうか。

これだけの勝率の見積もりがあるのなら、レイズされないのなら、それだけで打つ価値はあるんです。そして、実戦はこのボードはレイズした側に有利なボードで、相手にレイズする事ができるような強いハンドが入っているのはかなり稀です。

 

このAK、バリューベットにもブラフにもならないとよく言われますが、結局これはかなりバリューベット寄りのセミブラフであって、非常にベットする価値が高いのです。