木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

ポーカーの進化とツールの影響2

http://kihara-poker.hatenablog.com/entry/2019/12/03/142417

こちらの続編です。

 

AIの出現を超えるインパクトとは何かというと、統計ツール(ポーカートラッカー。HMは後追いのソフト)とHUDの登場です。

「え?そんなこと?」

と多くの読者の声が聞こえて来ました。この変化の大きさは、統計ツールが当たり前だと思っている多くの層にはピンと来ないかもしれません。

 

HUDの登場以前は、

「ボタンからめっちゃルースな人がオープンして」

と言った時に、そのルースが60%なのか70%なのか80%なのか全く区別出来ませんでした。同様に、タイトな人がオープンして、と言っても、ボタンの参加が25%なのか30%なのか35%なのか。とにかく、

「ルース」「タイト」「標準」「アグレ」「3ベットが多い」

と言った情報を伝えたり、もしくは考えたりする際に、基準となる数字というものが存在しなかったのです。

また、プレーした結果を統計的に見返すことも不可能でした。

なので、COからQToで参加することがプラスなのかマイナスなのか、それを判断することも出来ない。全て感覚でやるしかなかったのです。

本当に強いプレーヤーは、レンジという概念は多分持ってました(自分は当時は駆け出しなので、ここは推測でしか無いです)。しかし、全体の参加率何%という概念はおそらく持ってなかったです。というのは、それを調べる方法もわからない上に、考えたところで実戦に応用するのが難しかったからです。

つまり歴史的には、全体の参加率何%という概念より、レンジという概念の方が古いのです。

 

この変化は非常に大きかったです。

人間の感覚は、失うお金と得るお金だったら、失うお金の方が大きく感じます。これは世界共通です。

3ベットするとポットは大きくなりますが、3ベットポットで負けると大きく負けます。なので、ボタンのオープンに対してのSBから、TT+,AQ+だけでの3ベットをするプレーヤーは比較的3ベットが多め、というクラスだったのです。

しかし、ツールが出てきたことで、どの程度3ベットに降ろすことが出来るかの数字が目に見えて分かるようになります。平均的に70%おろせたとします(当時は結構リアルに降ろせました)。

すると、ちょっと計算力がある人なら、エニハンで3ベットしても期待値がプラスであると気づくのです。

そう、70%降ろせれば+EVというのも、どれくらい降ろせれば+EVなのかという数字はわかってても、それが実際どれくらい成功しているかを把握することが出来ないため、全然現実的じゃなかったのです。

HUDが登場して、一部の人が3ベットの有効性に気づきます。当時は対3ベットを上手くプレーできる人は殆どいなかったので、めちゃくちゃ利益が上がります。

すると、3ベット率15%というようなプレーヤーと、3ベット率5%(それでも上がった方)というプレーヤーにプールが二分されていきます。

そこでより勝ったのは・・・15%側でした。

2010年から2011年あたりにかけて、ポーカーが一気にアグレだらけになった時代があるのです。アグレであることが正義、そういう時代です。プリフロップにコールボタンは要らないと言っていい、というようなことを言うプロも結構いました。今の目から見たら当然、それは本来のバランスではなくやりすぎです。上のレートから次第に、そういうプレーヤーを食う技術が生まれ(ライト4ベット、小さいオープン、3ベットコールからのフローティング、モンスターハンドのスロープレイ)、下のレートまで広まっていき、2014年頃はやりすぎプレーヤーはカモ扱いされるようになります。2014年から2015年はかなりバランスの取れたプレイを志向していく時代です。そんな時に登場したのがAIです。ポーカースノーウイーの誕生は2013年で、2015年辺りに結構話題になりました。ソルバーは2014か2015に登場し、大きく話題になったのは2016年ですね。

 

ちなみに、この間はアメリカでオンラインポーカーがちょうどできなくなった時期でもあります。アメリカ人でオンラインで稼いでいた人は、ライブに以降するわけですが、オンラインをやらずにプレーを進歩させるのは至難です。なので、アメリカの5/10あたりで、進歩した戦略でアグレを食うことが非常に利益が上がるのです。

大体、オンラインで流行ったプレイは、2,3年経ってライブでも流行る傾向にあります。情報の伝達速度がそれくらい違うんですよね。で、一昔の戦略を食うために新しい戦略が生まれるわけで、ライブに行くと常に1時代古い戦略がはびこっているので、オンラインでしっかり打ち込んでいる人からすると、ライブもレベルアップしているにも関わらず、そこで稼いでいるプロですら常に美味しい、という状況が2010年代だったのです。

 

 

最後、話がそれてしまいましたが、ポーカーの進化に最も革命をもたらしたもの、それはHUDである、というのが自分の結論です。