ケリーの公式5:取らざるを得ないリスクと取るべきではないリスク
http://kihara-poker.hatenablog.com/entry/2019/05/21/165927
ケリーの公式シリーズ最後です。
ケリーの公式でググると投資関連の記事で
「ハーフケリー」
なるものが出てきます。
曰く
「ケリーの公式で取れと言うリスクは、実際非常に大きくて、その金額を負けると精神ダメージも大きいし、見積もりが間違えていることもあるので、公式の半分を賭けるのが正しいのではないか」
とのことです。
うーん、言わんとすることは分かるのですが、読んだ第一感は
「結局ケリーの公式を理解してないよね?」
ですw
結局、投資関連では、オプション取引以外はケリーの公式を当てはめることが出来ないのです。多分、
「荒れてない場でロスカットと利確を設定し、途中で抜けたりしない」
ならある程度当てはめる事ができるのかもしれませんが、投資ってそれで勝てるようなものでもないですよね?(自分は投資をやらないので詳しくないですが)
だとすると結局計算出来ないわけで、それなのにbとかpとかにそれっぽい数字を代入して出てきたfを1/2にする行為に何の意味合いがあるんでしょうか。
更に言えば、見積もり間違いの件は他の記事の通りなのですが、自分がゲームを長くやってきて思うのは、多くの人はそんなレベルじゃない見積もりミス(そしてそれはほとんど自分自身に都合が良い方のミス)をするのです。
その理由については前の記事で書いた通りです。
結局見積もりもあやふや、代入して求める事もできない。そういう不完全な計算をして、出てきた結果をとやかく言っても全く意味がないんですね。
じゃあケリー基準を勉強する意味はないのか、と言うと、それもまた全然違うと思うのです。
ROIが100%もの超優良案件があったとします。
賭けるごとに期待値が賭けた金額の2倍です!
1対1のオッズなら、勝率100%。当然全財産を賭けるべきです。
でも、1対2、日本式に言うなら3倍。2/3で3倍になる賭けなら、やっぱり期待値2倍ですが、ケリーさんはこんな勝負に財産の半分を賭けろと言うのです。
50分の1で100倍になるものなら、1%です。
ケリー基準から見ると、勝率というものに非常にシビアだということが分かります。
ところで、あなたはとあるゲームのスペシャリストです。資産は8000万円だとします。
とあるお金持ちに、そのゲームでの勝負を持ちかけられました。
方式はマッチ。ポーカー的に言うと、1対1のトーナメント。麻雀的に言うとサシウマ。
相手とのスキル差を考えると、勝率は60%と言い切る事ができ、イカサマがないことも保証されてるとします。
お金持ちは
「一回あたり2000万円で5回やろう!」
と言ってきたとします。ただし、こちらが4連敗した場合はそこで破産して終了です。
受けますか?受けませんか?
もちろん期待値はプラスです。しかし、基準より大きな金額ですよね。更に、基準的には、負けたらベット額を下げないといけないのですが、それは当然許されません。
そう、ネットを使ったデイトレードと違って、実際の勝負では、基準よりかなり大きな勝負か、基準よりかなり小さな勝負の2つしか存在しないことが多々あるのです。
以前、ポーカーのトッププロのフィルガルファンドが
「プロが若いうちに1日で全財産の50%以上を失った経験がないのなら、BR管理的にnitだ」
と発言してました。
nitとはポーカー用語で、タイトより更に固すぎる人を見下して呼ぶ言い方です。
結局、そういう勝負を受けるか受けないか。そして、若いうちにそれを受けないプロは駄目だとガルファンドは言うのです。
そういう勝負を受けていれば、いつかは壊滅的な負けを喫するのですが、負けた時にまた安いレートからコツコツやって時間をかけて復活すればよいのです。そうして、そういう勝負でジャンプアップする。そういう経験をしないと、トッププロには届かない。ガルファンドはそう言うのです。
こうやって解説しつつ、実は自分はポーカーをある程度以上やってから、1日で総資金の50%どころか、10%を失ったことすら無いです・・・
資金管理的にnitどころではないです。
ただ、ポーカーを覚えたのが26歳になるちょっと前と既に若くなかったし、今のように家庭を持つとそういう無茶は本当に出来なくなります。18歳、せめて20歳のうちにポーカーを覚えていたらとは思うのですが、ないものねだりをしてもしょうがないから、これからも基準よりはるかに安いレートでコツコツやっていこうと自分は思います。