ケリーの公式4:応用の難しさ
ケリーの公式を勉強して、それをどうやって実際の資金管理に活かそうか。
これって、公式のことをしっかり理解していても、非常に難解なのです。
前回の記事で書いたように、公式は結果が勝ちと負けの2つの場合にしか適用できません。
バックギャモンのポイントマッチ、ポーカーの勝者総取りのトーナメント、競馬。
しかし、バックギャモンの普通のゲームは、展開次第で1点、2点、3点、4点、6点、8点・・・を勝ったり負けたりします。
ポーカーも、普通の勝負は勝つか負けるかではなく、いくら勝つかいくら負けるかです。これらには公式を当てはめることが出来ないので、見積もるしかないのです。
更に更に、一番難しいことはこれです。
「勝率60%のゲームをして」と最初に決めて、それを無限回数行った場合のベストの資金管理方法を考えるわけですが、実際にプレーする上で、「勝率60%」ということをあらかじめ知ることは不可能なのです。
それでも、バックギャモンやポーカーのマッチでは、結果とその解析結果から、ある程度プレーすればそれなりに信用できるデータが集まり、そこから勝率をそこまで大きくない誤差で見積もるのは容易です。
株式投資でケリーの公式を当てはめる事ができるのはオプション取引でしょうか。しかしそれですら、同じ相手と複数回やるゲームではなく、状況も毎回異なる中で、どうやって正確な勝率を見積もればよいのでしょうか。ましてや普通の投資だと・・・となるのです。
運が絡むゲーム(勝負や投資でもいいけど)は、勝つ時は必ずある程度以上運が良いし、負ける時は必ずある程度以上運が悪いです。それはどんなに強い人であっても、です。そして、人間は、勝った時の運の要素は過小評価し、負けた時の運の要素は過大評価してしまうのです。結果として、自分の実力を過大評価してしまう、つまり、勝率の見積もりを本来より高く評価してしまうのです。
また、全く同じ実力の人が二人いたとします。
二人は100回の選択のうち、20回ずつ、同程度のミスをするとします。
当然ですが、ミスする箇所は別々です。
すると、自分がしないミスを相手がする、ということはそれなりの頻度で見ます。
相手から見ても全く一緒なのですが、自分自身は、自分のミスにはなかなか気づけないのです。だって、それが分かるなら最初から修正されてるはずですよね。
その結果として、相手の実力を過小評価してしまうのです。
そう、人間が勝率を過大評価するのは、運の要素とミスに気づく要素の2つの要素が同じ方向に過大評価させてしまうことで、より大きく勘違いしてしまうのです。
ポーカーや麻雀やバックギャモンをそれなりに真剣に真摯に、めちゃくちゃたくさんの回数をこなすと、それらをしっかり評価する力が、「人によっては」身につきます。身につかない人は全然身につかないけど・・・
ただ、人間はそういう傾向があるということを知っておき、自分自身もそう考えてしまいがちだと常に気をつけているだけで、かなり過大評価を小さくすることが出来るのだと自分は思います。