木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

ポーカープロはサービス業だ

ちょっと過激なタイトルですが。

これ、賛否両論あって、特にプロ側から否定されることが多いのですが、自分は常々そう思ってます。

 

ポーカープロは何も生み出していない、とは良く言われることです。

別にそれを否定する気はないし、そういう価値観の人はそうなんだ、で自分としては完結です。そちら側の価値観にも賛同は出来ないですが。

 

しかし、言ってしまえば、例えば漫画喫茶だって無くても誰も生活に困らないわけです。任天堂のようなゲーム機メーカーだって無くても誰も生活に困らないわけだから、ゲーム機を作っているけど別にそれがないと生活が困るという人はいません。その流通とか、そこに既に関わっている人以外。その他サービス業の大半はそうなんじゃないでしょうか。

もちろん藤井七段や羽生結弦さん、大谷翔平選手だって、いなくたって誰も生活には困りません。卓球の平野、伊藤、張本選手だってそう。他の棋士や他のゲームのプロも同様だし、芸能人も同じです。

 

そういう人は何も生み出していないから価値がない、と言うのなら、別に自分はそういう価値観は全否定はしませんが、少なくても自分は賛同できない、と言うだけです。

そして、このような職業が許されることが、社会が豊かになってきている証でもあると思うのです。生活するための必需品だけじゃなく、みんなの生活を豊かにしていく、生活に潤いを与える職業。

 

ポーカーって、めちゃくちゃ面白いゲームだと自分は思います。

ポーカーを知って、程よい距離感で楽しむことが出来たら、生活は楽しくなると思うのです。もちろんそうじゃない人はポーカーをやらなくていいとは思うけど、本当は一生の趣味としてのポーカーに向いているのに、たまたまポーカーを知ることなく一生を終える人がいたとしたら、その人は人生を損していると思うのです。

そして、そういう人にポーカーの魅力を届ける、また、対戦相手としてポーカーを楽しませる。それによって対価を得て生活する人が「ポーカープロ」なのだと思います。

 

一方で、ポーカーは非常に競技人口が多いゲームです。

プロも数万人います。

しかし、数万人のプロのうち大半は、アマチュアのプレーヤーを楽しませることなく、単にお金を稼いでいる人たちです。

もちろん、最初はある程度しょうがないんじゃないかなとは思います。

プロ野球の選手だって、多くは二軍時代に給料をもらいながら、でもその対価以上に誰かを楽しませることは出来なかった人でしょう。

一軍のレギュラープレーヤーは、貰う給料は二軍の選手の数十倍ですが、ファンを楽しませて対価を貰うという観点からはむしろ、二軍の選手のほうがパフォーマンスが悪いのです。しかし、二軍の選手はそうやってスター選手が稼いできたお金の幾ばくかを貰いながら、いずれ一軍の選手の立ち位置になれるように努力しているわけです。

 

ポーカーも、ポーカーの魅力を世界中のファンに届けることが出来ているプロはかなりの少数です。ダニエルネグラーノはかなりの金額のスポンサー料を貰っていと思いますが、それでも彼は貰っている金額以上にポーカースターズ(ダニエルのスポンサー先)やポーカー界に対して貢献しています。

その一方、大多数のプロは、そういう有名プロが集めたポーカーファンから勝つことで生計を立てています。

 

結局、負けるプレーヤーが来てくれない限り、ポーカープロという職業は成立しないんです。

でもそれを悪く言うつもりはありません。ディズニーランドだって、お金を落としてくれる人がいないと業として成立しないんです。

現状そこまでの余裕がない、というのは仕方ないと思います。ダニエルだって、フィルアイビーだって、そういう時代を経て強くなったんでしょうし、他の有名プロも一緒です。野球の二軍選手とも同じです。

でも少なくても、一緒に打ってて、負けてもこの人に負けるんだったらまあいいかなと思われるような、一緒に打っている時に楽しいと思わせることができるような、そういうプレーヤーに、少なくてもそこはプロは全員目指さないといけないんじゃないのかなと思うわけです。

 

そうやって、相手を楽しませて(ポーカーの場合は長期的な期待値として)対価を頂く。これってサービス業の感覚そのものですよね。こういう感覚を持っていたら、ミスプレーをして結果的に引いて勝ったプレーヤーに対して怒るプロとか、ちょっとあり得ないと思うのです。もちろん引かれて残念という気持ちはあるし、短期的に落ち込んでもいいし、

「うわああ!!」

くらい声が出てもいいけど、対戦相手や、ましてディーラーを罵倒するなんて出来ないはずです。

 

 

今日、とあるプレーヤーに

「同じ負けるにしても、○○や△△のようなプロじゃなくて、君に負ける方がずっといいよ」

と言ってもらえて、普段から意識していることを認めて貰えたように思えて非常に嬉しかったし、今日のこのエントリを書くきっかけでもあります。

そして、より多くのプロがそういう心構えでいるならば、ポーカー界はずっと良くなります。現状、そういう心構えでポーカーをやっているプロは少数派だと思うので、こういう感覚を持つことは、短期的に得を逃すように見えても、実は長期的にはそのプレーヤー本人のためになると思ってます。