木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

3ベットするハンドとMDFと

コメントに、

「どういうハンドで3ベットすればいいか」

という質問を頂きました。

これってどこまで行っても難しい問題ですし、そもそも

「どういうハンドで3ベットすべきか」を聞きたいのなら、単にスノーウイーとかにかけてみれば良いだけなので自分がブログで解説するのも意味がないです。

 

ただ、それに関連して昔の事を少し思い出したのと、最近ちょっと話題になってるMDFというものについての考えを書きたいと思います。

 

 

自分がポーカーを覚えたのは2007年。

覚えた時に打っていたレート(0.5/1です。今からしたら信じられないかもですが、当時はこのレートも結構ぬるかった)。

戦略本もない状態で自分がどうやって色々プレーを改善していったか。

強いと思ったプレーヤーが打っているテーブルを何面か開いて見てました。

そのプレーヤーは、全員フォールドで回ってきたSBからレイズする時は2bbのミニレイズを使ってました。

自分が0.5bbを既に出しているので、フォールドするときと比べたら、1.5bbを追加で出して、自分の0.5bbとBBの1bb、合わせて1.5bbを取りに行くことになります。つまり、50%降ろせればOKです。

で、見ていて、それなりの頻度で降ろせていることに気づきました。

そこで

「全員フォールドで回ってきたら、SBから全ハンドでミニレイズしたら得じゃね(当時は+EVという表現はなかったです)」

と思ったのです。

そこで何をしたか。そのプレーヤーがSBで、全員フォールドで回って来て、ミニレイズしたハンドと、ミニレイズに対して相手が降りたハンドを手動で100ハンドほど数えました。

すると、60%弱ほど、ミニレイズで相手をおろせることが分かりました。

つまり、そのレートの平均的なプレーヤー相手には、23や27も含めて、すべてのハンドでSBから2bbにレイズすることが得だったのです。

それを使える状況は、自分がSBかつ全員がフォールドで回ってきた場合かつ相手に自分の戦略を知られていない場合、に限られるのですが。

 

ところで当時、日本の友人にすごく若い天才プレーヤーがいました。

当時は、3ベットはすごく強いハンド以外でやってはいけないと思われていました。

ボタンからレイズが入った時、SBからJJで3ベットしていいのかどうか、そんなことが真剣に議論されていた時代です。今なら当然3ベットですが。平均的な3ベット率は3から4%。

そんな常識の中で、その友人は、3ベット率15%ほどで3ベットしまくる戦術が得だと気づき、実行しました。

今から見るとやりすぎなのですが、広く3ベットされることに慣れていないプレーヤーは尽く彼にやられました。

当時は3.5から4bbにオープンすることが主流で、特にボタンの方が大きくレイズせよとされてたので、ボタンからは4bbが多かったです。

それに対し、SBから14bbの3ベットを打ちます。

13.5bbのリスクで5.5bbを取りに行くので、

13.5÷(13.5+5.5)=71%

ほど降ろせれば、すべてのハンドで3ベットすることは肯定されるのです。

そして、実際それは70%近くの成功率だったのです。

また、コールしかされない場合、フロップ以降でポットを取る可能性は十分にあります。つまり、3ベット自体がコールされてフロップに行った分のフリーロールに近い状態だったのです。

それ以外にも、今だったら当たり前と思うようなプレーですが、当時的にはすごく新しいプレーをたくさん見せてくれました。

残念ながらその天才の彼は、お酒とギャンブルの依存症的な要素もあり、プレーヤーとして日の目を見ることは無かったのですが・・・

 

 

ところで、話題になったMDFというものは何かというと、さっきSBからエニハンで2bbにした時、50%以上で降ろせるならエニハンで2bbにレイズすることが肯定されるという話を書きました。

逆に言うと、BBはエニハンレイズに対して50%以上降りると、相手にエクスプロイトされてしまうことになるのです。

なので、この状況のMDFの50%とは、50%以上でコール(かレイズ)しないといけないという数字なのです。ミニマムディフェンスフリークエンシー。最低でも守るべき割合、とでも言えば良いでしょうか。

3ベットの状況の話なら、MDFは71%ですよね。

冒頭の質問の話に戻って、自分はHUDに fold to 3bet の項目を表示させてました。

というか、HUDを使ってる人はほぼ全員が表示させてるとは思いますが・・・

これが65%を超えている人に対しては、すごく広く3ベットして行く、ということをやるようにしました。特にボタンやカットオフからのレイズに対して。ただ、それを狙っているとばれない程度、たまたまいい手がそこそこ入ったのかなと思われる頻度には抑えます。

一方、40%程度の人に対してはかなり絞って3ベットしてました。

 

結局、ポーカーは相手がどうプレーしてくるかによってプレーを変えるゲームなのです。ソルバーやスノーウイー的なプレーを学ぶことは大切ですが、そっちに寄りすぎてもいけない。

冒頭の質問をする人が平均的に見落としている考え方は、

「ポーカーは相手によって正解が変わるゲームである」

ということなんじゃないかと自分は思います。そこを意識するとプレーは少し良くなると自分は思います。

 

この記事の続き、MDFについて、ツイッターで結構見た誤解、について次回書こうと思います。

 

おじさんおばさんとはいつから?

おじさんとかおばさんって、昔はもっと若いうちから使われていましたよね。

今だと、そう呼ばれる境界線って何歳くらいなんだろう。

それについて、自分が思う考えを書きたいと思います。

 

元々、「おじさん」「おばさん」は「叔父、叔母」なわけです。

つまり、親の兄弟姉妹。

一義的には、

「兄弟姉妹が子どもを産んだら、おじさんおばさん」になるのです。

 

また、そこから転じて、友だちの親を

「○○君のおばさん」

と呼ぶようになったはずです。(言葉の歴史的なことは知らないけど、多分そうでしょうw)

そして、その後、知らない人でも、自分の親や友達の親と同世代だと思う人を指して

「おじさん、おばさん」

と呼ぶようになったはずです。(言葉の歴史的な略w)

 

ところで、子どもが伯父伯母という存在をしっかり認識するのは3歳位からでしょうか。なのでおじさんおばさんとは、

「3歳以上の子どもがいてもおかしくない年齢に達した大人」

を指す、と考えると定義的にしっくりします。

 

ところで、今はどんどん晩婚化が進んでます。

昭和の時代は25歳くらいで子どもを産むのが比較的普通だったのではないでしょうか。そうすると、28歳には子どもが3歳になる計算です。

しかし、今は平均初婚年齢が31歳くらいなので、第一子を産む平均年齢は33歳とかでしょうか。そうすると36歳位になると、平均的に子どもが3歳になります。

36歳位がおじさんおばさんと呼ばれるボーダーラインの年齢。感覚としっくり来ませんか?

自分は今年37歳。息子も2歳。この定義からも、完全におじさん側に入ったんだなと感じます。

 

 

ライブとオンラインの違い

ライブポーカーとオンラインポーカーは別物か、同じものか。

こんな結論の出そうにない話ですが、よく目にしますよね。

これについて、自分の思う考えを主にプロ目線から書きたいと思います。

 

まず、確実に言える差としては、

・オンラインポーカーの方がレベルが高い(同じ強さでの比較ならレートが安い)

・オンラインはHUD(データを表示するツール)が使える

・オンラインは多面うちが出来る

 

・ライブはオンラインよりレベルが低い(同じ強さでの比較ならレートが高い)

・ライブはフィジカルテル(身体的なクセ)の要素がある

・ライブは1面しか打てないため、多くの場合暇である

 

これは誰がなんと言おうと否定し得ないことだと思います。その上で・・・

ちゃんとしたプロならば、圧倒的に違う点があるのです。それはレベルの高さ低さともつながる点ですが、

 

・ライブはすごく適当に集中してない状態で、テキトーに打っても勝てる

(数学用語の「適当」との混同を避けるために、カタカナで書きました)

 

これに尽きると思います。

例えば、ライブで5/10NLHEを打っているとします。

情報がない相手(アンノウン)が100bb持ちで、カットオフから3bbにオープンしてきました。自分はボタンでKQoを持ってます。どうプレーするのが良い?

こういう議論があったとします。

正直、これは

「降りてもトータルで勝てるし、コールしてもトータルで勝てるし、3ベットしてもトータルで勝てる」んです。もっと根本的な致命的なミスをたくさんしない限り。

一方、オンラインの1/2NLHEだと、そういう細かい差が、トータルで勝つ人と負ける人を分けることになります。根本的な致命的なミスをする人はほぼいないと考えても良いのです。

 

ライブだと、どうプレーしても勝てるので、ライブの議論は主に

「どうプレーするとより時給を上げられるか」

「どうプレーするとより相手からミスを引き出せるか」

になるのです。ライブは1面しか打てないので、そこが最も重要な要素になるのです。

30bb/100くらい勝てるのを、如何に50bb/100にするか、なのです。

 

一方オンラインだと、薄い利益の中で細かい差を考えないといけないので

「対戦相手が大きなミスをしない前提で、どうプレーすると勝つ可能性が上がるか」

を議論することになるのです。

0bb/100を2bb/100にするにはどうすればいいか。

 

 

しかし当然ですが、議論する人がライブで勝てるかどうかのボーダーの実力なら、ライブのプレーの議論についてもトータルで勝てる可能性について考える必要が出てきます。

そして、ハンドの議論をする際には多くの場合、ライブで勝てるかどうかのギリギリの人が、ライブは勝って当然のプロに質問をすることからスタートするのだと思います。

その、認識というか前提というか、これを先に埋めておかないと、同じハンドを議論してるように見えても、全然噛み合わないことになるんじゃないかなと自分は思うのです。

 

 

 

トーナメントとキャッシュゲームのプレーの違いと理由

トーナメントとキャッシュゲームではプレーは異なりますよね?

そして、プレーが異なる理由、何ででしょう?

 

よく聞く答えとして

1、トーナメントは飛んだら終わりなので、オールインをコールするときは慎重に

2、トーナメントは飛んだら終わりなので、相手をカバーしている時はコールを増やし、相手にカバーされてる時はコールを減らす

3、トーナメントは飛んだら終わりなので、カバーしている時はオールインを積極的に仕掛けるし、カバーされてる時は慎重に

4、キャッシュゲームは負けても買い足せるので、相手はプレッシャーを感じてくれないからブラフは厳禁

5、キャッシュゲームは負けても買い足せるので、そこそこ勝つ可能性があれば突っ込んでも良い

6、トーナメントはICM的にバブルファクターがあるから、その分タイトに打たないといけない

 

 

 

ちがああああああああああああああう!

違います、トーナメントとキャッシュゲームで最も違う点、それは

・トーナメント(の序盤以外)はアンティがあって、スタックが少ない

これに尽きます。

ターボじゃない9人テーブルのトーナメントは、SBの1/4くらいのアンティがあり、平均スタックが30bbくらいです。

キャッシュゲームは、50bbなら一番ショートであることが多く、100bbが割と標準。バイインに天井がないところだと、500bbや1000bb持ちの人もそれなりにいます。

 

100bb持ちのキャッシュゲームを基準に考えることにします。

スタンダードなオープンサイズは、今は3bb。

その状態で、BBだけがコールして、フロップからリバーまで7割ベットをし続けた場合

フロップで6.5bbに対して4.5bb

ターンで15.5bbに対して11bb

リバーで37.5bbに対して26bb

合計で44.5bbをプレーすることになります。これだとオールインになりません。

 

一方、トーナメントだと、3bbにオープンしてBBがコールするとポットは3+3+0.5+0.125×9で7.625bb。

フロップで7割(5.5bb)打ったら18.6bb

これ、残り21.5bbなので、ターンはもうオールインしても良い金額です。

そう、キャッシュゲームと同じようなベットサイズをすると、アベレージ持ちのスタックでもターンでも自然にオールインになるんです。

 

でも、せっかく(特に強い手で)ベットするなら、リバーでオールイン判断を突きつけた方が得じゃね?

それなら、プリフロップで2.2bbにしよう。フロップとターンは4割にしよう。

するとリバーを、19bbのポットに、9bb弱を投入した状態で迎える事ができるのです。

ベット機会が多いので、途中で相手を降ろせばポット獲得です。

しかも、ポットに対してかなり小さめの金額をベットしていくので、ブラフの効率が良いです。

この考え方が「スモールボール」というやつですね。

また、一般的にはよく見る誤解1から3のために、途中で降りすぎる人が多いです。

キャッシュゲーム、さらにアンティがある状態で、ボタンが2.2bbにオープンしました。BBだったら、殆どエニーに近いハンドでコール以上しませんか?

でも、トーナメントなら結構降りますよね?

そして、そうやって降りてもらえるなら、小さく打つことは正当化されます。

また、小さく打っても降りてもらえるなら、高頻度で参加することも正当化されるのです。

 

 

トーナメントであっても、結局ポーカーはチップを増やすために頑張るゲームなのです。

決して、生き残るゲームではない。

もちろん、入賞直前でショートだったら、チップ的には行かざるを得ないハンドを降りることも出てくるでしょう。BFとかICMとか云々的な要素によって。

でも、多くの人はBFとかICMとかを過大評価しすぎています。

チップが増えてなんぼ、であることは変わりないのです。

 

戻って。

30bb持ちでアンティがあるキャッシュゲームだと、やはりオープンサイズは100bb持ちのアンティがないゲームより小さくなります。

アンティがないゲームは、スチールするモチベーションが非常に低く、それによってブラインド以外、特にアーリーポジションから参加するならかなり強い手を選ぶことになります。

以前も書きましたが、ポーカーの基本的な原則として、

「頻度が高いなら安く、頻度が低いなら高く」

というのがあります。100bbのアンティなしゲームのアーリーポジションはどうせ強い手しか出てこないので、絞って大きくレイズする訳です。自分は9マックスのUTGなら、オープンする際は4bbの方が良いんじゃないかと思ってます。

しかし、アンティがある30bbゲームだと、たくさん参加することになります。スタックが小さいので、小さいレイズで入ってもリバーでオールインまで届くから、小さめの金額で広く参加することが正しくなるのです。

また、それを受けたブラインド側も、3ベットしたりコールしたりで広くプレーすることになりますし、ある程度のハンドでオールイン勝負が多発することになるのです。

しかし、トーナメントに対する誤解のために、オールイン勝負にならなさすぎです。それは、そのことをよく理解しているプロが、より勝ちやすくなることに繋がるのです。

 

トーナメントは飛んだら終わりって言うけど、トーナメントで飛んだって別のトーナメントに出たり、キャッシュゲームを打ったりすれば良いだけです。飛んだって良いじゃないですか。

もちろん、トーナメントに出ている時間そのものに価値があると言うのはアマチュアの特権ですし、その価値観は否定しません。しかし、期待値という面だけから見ると、実はみんなが思っている以上に、「飛んだら終わりだから」というプレーの理由付けは間違えているのです。

 

 

poker stadium

来年の春に、本格的なノーリミットホールデムがプレー出来るゲームセンターのゲームが初めて登場します。その名前は「poker stadium、ポーカースタジアム」。バンダイナムコからのリリースです。

以前にもテキサスホールデムをプレー出来るゲームがありましたが、そちらはメダルゲームだった上に、特殊なリミットゲームでした。

今回登場するゲームは本格的なノーリミットホールデムです。

 

https://twitter.com/poker_stadium/status/1057845460432351232

 

こちらがその公式ツイッターページです。もし興味があればRT&フォローしてください。

このゲームの監修を、自分がやらせてもらっています。

日本のポーカー界を大きく動かすようなプロジェクトの監修に声をかけて頂いて、今までの自分の活動を評価して頂けているのを感じ、非常に嬉しく思います。

 

さて、このゲームですが、ブラインドが上がらない、リングゲーム形式です。

1プレー200円(予定)で、100-200ブラインド。8000点スタート。アンティはSBと同額の100と非常に大きめの設定にしました。これは自分が強く推した部分です。また、プレーの持ち時間もあり、それがなくなると100円で時間を購入します。

そして、20000点になったらステージクリアで、別のテーブルに移動することになります。その際に、ランクが上がります。当然ですが、ランキングも公表されます。

ステージクリアになった場合は、追加のお金投入は無しで、持ち時間も回復して次のゲームに進む事が出来ます。

 

このプロジェクト、開発陣が全員、ポーカープレーヤーです。

個人的には、面白いポーカーゲームを作る上で、これは非常に大切なことだと思います。

ポーカープレーヤーとしては、極力ディープスタックでポーカーをやりたい。でもゲームセンターのゲームとしてはある程度収益に繋がらないと困る。それを解消するためにハンド数で区切ってお金を取るとかだと、ゲーム性を壊してしまう。かと言ってトーナメントみたいにブラインドをあげて強制オールインになるようなことはしたくない。

そのバランスを考え、議論し、何度も何度もテストプレーをして、最終的に決まったのがこのシステムです。何よりゲームセンターのゲームなので、タイトに打つことが期待値的に正しいというようなゲームにだけはしてはいけない。それは運営側にとっても、プレーヤー側にとっても良くないことですから。

100-200でアンティ100。この大きなアンティはタイトに打つとジリ貧で負けてしまう、ある程度以上参加しないと負けてしまう、そういうゲームにするには必須であると自分は考えました。

 

このゲーム、来年(2019年)春から稼働予定ですが、11月10日(土)から11月18日(日)まで、東京池袋のラウンドワンと、大阪のnamco梅田で、ロケテストがあります。稼働前のテストを兼ねた発表会的なものですね。

どちらも、プレーする上で特に条件はありません。当日ふらっとゲームセンターに足を運んでいただければプレー出来ます。

 

ロケテストはお祭りみたいで楽しいという意見が複数あったので、自分も告知なしでシレッと参加してみたかったのですが、運営関係者はお金を投入してはいけないとのこと。確かにテストの意味がないですからね。残念w)

 

では明日からスタートのこのイベント、宜しくおねがいします!

 

ゲームへの適性:ポーカーや麻雀と、将棋や囲碁

一般的に、人間には様々な向き不向きがあります。

自分が幼少期からどんな英才教育を受けていて、そこに自分自身が夢中になれるくらいの興味があったとしても、絶対に100メートルのオリンピックメダリストには慣れなかったのは間違いないでしょう。

逆に、ウサイン・ボルトがどんなにポーカーに興味を持って真剣にやったとしても、自分はおそらくトータルで彼に負け越すことはないとも思います。100メートルを引退してサッカープロを目指して、早くもプロの試合に出てるので、彼はスポーツ全般に対して大きな適性があるのでしょうが。

 

自分に関していえば、平均的な人類より、ゲーム全体への適性はかなりある方だったと言えると思います。

 

ところで、ゲームへの適性と言っても、ゲーム内でも色々な種類の適性があります。

将棋への適性、囲碁への適性、チェス、麻雀、バックギャモン、ポーカー・・・

 

自分はポーカーのプロで、ポーカーへの適性について感じることが多々あるので、それを書こうと思います。

 

ポーカーは「不確定不完全情報ゲーム」に分類されます。

平たく言うと、「運が絡み、相手の情報が見えないゲーム」です。

 

一方、囲碁や将棋は「確定完全情報ゲーム」です。

「運が絡まず、相手の情報がすべて見えているゲーム」

ですね。実は、この観点からみると、囲碁将棋とポーカーは正反対なゲームなのです。

 

基本的に「確定ゲーム」、つまり、運の要素がないゲームだと、何手先、とかの深読みが出来ます。そして、読んだ先に読み抜けがあって、それが致命的なダメージにつながったりします。

一方、「不確定ゲーム」、運の要素があるゲームだと、深読みは基本的には出来ず、その代り、漠然とした見通しと、大雑把な勝率を確率で認識する能力が要求されます。

 

「完全情報ゲーム」、相手の情報が見えているゲームだと、その局面を正確に判断する能力が必要となります。将棋だと形勢判断、バックギャモンだと勝率やギャモン率などの確率。

一方、「不完全情報ゲーム」だと、相手の持っている手の組み合わせを漠然と把握し、それに対してどの程度こちらの手が有利/不利か。そして、ゲームの進行によってその手の可能性がどんどん変わっていくので、それを常にアップデートしていく能力が問われます。

 

トータルでは、囲碁将棋では

「先を(主に一段落する局面まで)正確に読み、その先の局面の形勢判断をする。それを複数読み、それらを比較してどれがより勝ちに近いかを判断する。

その過程で読み抜けがあったら一気に不利になる可能性があるため、正確な読みと形勢判断が必要となる」

一方、ポーカー(麻雀も近いですが)は

「次に何が来るかも分からず、相手の手も分からない。なので正解手とされるプレーも本質的には無い。

そのうえで、相手が持ちうる手の可能性を考え自分の手を考慮した上で、どのプレーが最善かを常に判断し、自分が信じた最善を実行し、踏み出すことが大切」

 

だと思います。

ポーカーや麻雀は、暗闇の中、信じた方向に突っ走る、そういうある意味無謀なことをゲーム内で躊躇なく出来ないといけない。

囲碁将棋は、明るくよく見える中から、如何に遠くを正確に見通すかが問われる。

 

囲碁将棋が強いからと言ってポーカーが強いとは限らないし、逆も然り、というわけです。自分は将棋はかなりやりましたが、そこそこまでしか強くならなかったので。

しかし当然、両方に強い適性があることも十分にありえます。

将棋で言うと、

「ちょっと不利な形勢。Aを選ぶとそのままちょっと不利な状況で着いていくことが出来る。Bを選ぶと、9手先に相手の好手があって、それを指されると一気に負けになるけど、対戦相手がその手を見落としていた場合、若干有利な局面に持ち込むことが出来る」

という時、そして、対戦相手がその見落としをする可能性が高いと判断した時。

勝率40%のままで行くか、相手が7割の確率で見落とし、その時60%勝てる。

その時に、躊躇なく後者を選び、対戦相手に好手を気づかれてあっさり負けになった時に、それを引きずらずに諦めることが出来るか。

それが出来る人は、ポーカーや麻雀の適性があると言えると自分は思うのです。

 

自玉が詰むか詰まないか際どい。若干詰まなさそうに見えるが本当に際どい。

受けたとして、受かるかどうかも分からない。

今なら敵玉には必死をかける事ができる。

持ち時間はない。

 

そこで何を選択するか。

自分が「詰まなさそうに見える」と思ったなら、それを信じて突っ込む、それが出来る人のほうが、ポーカーに向いているんじゃないかと自分は思うのです。

 

「頑張ってください」と「頑張りましょう」「頑張ります」

自分は「頑張ってください」という言葉がかなり嫌いです。

 

「頑張ってください」と言われる立場の人は、大体既に十分すぎるくらいに頑張っているのです。そして、言う方も言われる方も、そのことは百も承知なのです。

なので、言う方は勿論、頑張りが足りないことに言及しているわけでも、実際にそれ以上の頑張りをすることを求めているわけでもなく、単に応援する気持ちの表明として「頑張ってください」と言っているわけです。

勘違いされないように明言すると、「頑張ってください」という言葉を言う人が嫌いなわけでは決してありません。だから言われた時は真の意味と捉えて「ありがとうございます」と返します。

 

そう、「頑張ってください」という言葉は、表面上はさらに頑張ることを要求する言葉であるにも関わらず、真の意味は「応援していて、良い結果が出ることを祈っています」という言葉なのですよね。その点が非常に言葉として嫌いなのです。

 

同じく嫌いな言葉に

「なんで勉強しないの!!」

もありますが(当然真の意味は「勉強しなさい」)、表面上の意味と違う真の意味がある言葉は、言葉としてあまり良くないと思うのです。

 

しかし、「頑張ってください」という言葉には非常に難しい問題があります。

それは、日本語に、「頑張ってください」の真の意味と似た短い表現が難しいんですよね。受験生を会場に送り出す時に、「頑張ってね」という言葉を使わずになんと送り出せば良いのでしょうか。自分は塾の講師時代、相手によって

「リラックスして、試験を楽しんできてね。それが出来たら合格確定だよ!」

(主に成績が良くて受かる可能性が高い子相手)

「今までたくさん勉強してきたんだから、それを信じて力を出し切っておいで」

(本命のちょっと無理気味なところに挑戦する子相手)

などと使い分けてました。しかし、どちらも長い・・・

 

英語では非常に便利な言葉があります。

good luck

ですね。007などの映画でも良く出てくる、「幸運を祈る」です。すごくいい言葉だと思います。

 

今では、大人相手の場合は

「応援してます」

(キツい勝負に望む人相手)

「期待してます」

(成功する可能性が高い勝負の場合)

「グッドラック」

(ポーカーや麻雀など、明らかに運が絡む勝負の場合)

と使い分けるようにしてます。

 

何れにせよ、「頑張って」を使わずに短く表現するのは結構難題で、だからこそ「頑張って」が安易に使われやすいのですが、天の邪鬼な自分には、その安易さが嫌いな点でもあるのです。

 

 

一方、他の人に応援された時に

「頑張ります」

と言うのはすごく自然なことだと思います。

頑張るのは自分なわけで、そこまで頑張ってきたけどそのまま頑張るというのは極めて自然です。また、複数人数で行う作業に於いて

「頑張りましょう」

と言うのも自然だと思います。

 

そう、頑張るという言葉は、頑張ってない人を叱咤する以外では

「I」や「We」が主語になるべき言葉であって、「You」を主語にすべきではない自分は思うのです。

「期待してます」や「応援してます」だと、こちらが勝手に期待や応援をしていることを表明するだけであって、相手に何かを求めているわけではなく、それが言葉として心地よいんです。

 

繰り返しになりますが、

「頑張ってください」

という言葉を言う人が嫌いなわけではありません。単なる価値観の問題として、自分は使わないようにしていると言うだけです。ただ、この価値観に共感してくれる人がいれば、それはそれで嬉しいです。