ファラフェルとの思い出
ファラフェルが亡くなりました。
ギャモンプレーヤー以外は知らないかも知れないけど、ギャモンプレーヤーでは知らない人はいない存在。
史上最も偉大な将棋指しは?
こう多くの人に聞いたら、羽生さんと大山さんに大きく2分されると思います。
史上最も偉大な碁打ちは?
こう多くの人に聞いたら、めちゃくちゃ票が割れると思います。
史上最も偉大なポーカープレーヤーは?
これは、ドイルブロンソン、スチュアンガー、フィルアイビーで割れるんじゃないかな。
史上最も偉大なバックギャモンプレーヤーは?
こう聞かれた時、ダントツトップでファラフェルが選ばれると思います。2番目に恐らく望月さん。ファラフェルはそういう存在です。イスラエル系アメリカ人で、国民の殆どがバックギャモンをプレイするイスラエルでは英雄的な存在でもあります。
自分が初めてバックギャモンの世界選手権に参加したのは2007年。その頃は自分から見たら本当に雲の上の存在でした。
まだまだペーペーでしたが、棋譜取りが割と得意だったので、望月さんの紹介もあって世界トップの人たちのバックギャモンの試合の棋譜を取ったりしてました。チーム世界vsチームデンマーク(当時のバックギャモン王国)の棋譜を取ったこともあります。
2008年、2回目の世界選手権に参加。
ラストチャンスの一回戦の相手がなんとファラフェルだったのです!!!
一回戦が抜け番だったか、相手が来なかったか、の山本さんに棋譜取りをお願いして5ポイントマッチをプレイ。
時間的にはほんの30分ほどだと思うし、ゲーム数は3ゲームか4ゲーム。
自分なりに本当に全力を尽くして集中してプレイしたし、ファラフェルもそれに応えて真剣にプレイしてくれました。
結果は負け。
そして終わった時に
「あのプレイは悪かったと思うけど、他はすごくプレイ内容良かったと思うよ」
と一つだけ指摘してくれました。
帰ってからパソコンに棋譜を入れたら・・・
なんと、ファラフェルが指摘したプレイだけがブランダー(大悪手)で、それ以外は40点以上のエラー無し、エラーレートで2点後半という数字だったのです。
更に、ファラフェルはほぼノーミス、エラーレート0点台・・・
自分なりに実力は出せたし、満足する内容でしたが、これが世界トップか・・・というのを見せつけられたゲームで、非常に記憶に残ってます。
彼がよく言っていたセリフで
'No bet no talk'
というのがあります。
「この方が良いんじゃないの?」
と誰かが言った時、自信あるなら(解析結果に)金かけろよ、それが出来ない位の自信なら言うなよ、と。もちろん相手が学生だったりでお金がない場合は高いベットはしません。覚悟の問題なのです。
逆にファラフェル相手でもそういうべットを怯まずベットを受ける人は、次第に認められて行った印象です。
自分はその後、次第にポーカーに比重が移って行きました。
ファラフェルは、WSOPの時期は毎年ずっとベラージオに泊まってました。
ポーカーもバックギャモンもやるお金持ちが来るので、その人がバックギャモンをやりたいと思ったらファラフェルに連絡するんです。
わざわざファラフェルとやるなんておかしい?
いやいや、そんなこと無いのです。
例えば、将棋ファンが将棋を指したいと思った時に、羽生さんと対局出来るなら100万円払ったって良い、ってお金持ちは沢山いますよね?
将棋だったら勝負にならないから指導的意味合いにしかならないけど、バックギャモンなら勝負として成立するのです。
自分は結構ファラフェルと仲良くして貰ってて、たまにご飯を一緒に食べたりした時とかは
「もっとバックギャモン真剣にやったら?ポーカーの世界でトップ取るのは本当に大変だけど、バックギャモンなら現実的だよ」
と言ってもらったりしたのも覚えてます。そうは言いつつ、彼自身ももっとポーカーやろうかなあとか言ったりしてましたし、バックギャモンの予定がない時は、2/5のNLHEを打ったりしてました。バックギャモンとは逆にポーカーのハンドのことを聞かれたりしたことも何回もあります。
彼に限らず世界トップの人はみんなそうですが、優しくユーモアがあって後輩に気をかけてくれる人でした。毒舌で大口なイメージが強いけど、ギャモンに対しては真摯な、尊敬すべきナイスガイでした。
ファラフェルがずっと入院してて、長くないことは薄々分かってましたが、訃報を実際聞くと悲しいです。合掌。