家賃保証会社の控除率は90%前後!なぜこんなことがまかり通るのか?
2021/3/22
データの見方に誤りがありましたので、記事を訂正しました。
今の法律では、賃貸住宅の住人が家賃を長期に渡って不払いでも、強制的に追い出すことが出来ません。なので、追い出せない間の家賃のリスクをなくすために、賃貸住宅の大家(会社なり個人なり)は、保証人を要求します。
しかし、その保証人を業として請け負う会社があって、それが家賃保証会社です。最近、特に都内では、保証人ではなく保証会社を要求することが増えています。
一般的には、入居の際に家賃の0.5から1ヶ月分を保証会社に支払い、その後1年ごとに家賃の月額の数%を払う、というのが一般的です。
で、これ、高すぎませんかね?
https://www.mlit.go.jp/common/001227824.pdf
これは国土交通省による、家賃保証会社が払った金額の資料です。
1年間で2万人分を、家賃保証会社が家賃を負担しています。
「【集計件数】20,886 件
※ 求償から一定期間が経過し、損害額とされた残額の調査であるため、
損害の発生していない件数は含まれません。」
「【調査内容】家賃、損害額
損害額については、家賃債務保証業者が借主に代わって貸主に支払った、
家賃、共益費、管理費、駐車場料金、更新料、残置物撤去費、修繕費、
違約金等の総額から、借主に求償して回収した金額を控除し、求償から
一定期間が経過し、損害額として判断された残額としました。」
この文面から、滞納したものの、敷金の範囲で支払いが済み、保証会社から大家さんにお金が振り込まれていないものは20000件に含まれないと読み取れます。
https://www.mlit.go.jp/common/001011169.pdf
この資料の5ページ目から、東京の賃貸住宅は340万戸、日本全体の数字は見れなかったですが、東京と同じ比率なら3000万戸くらい。地方は持ち家率が高いと思うと、まあ2000万戸くらいでしょうか。
そのうち、保証会社に登録していた人の比率はどれくらいでしょうか。少なく見積もって、仮に20%としておきましょう。すると、1年当たり400万件中2万件、つまり0.5%から損害の出る滞納が生じる計算になります。
2万件というのは、大手からは直近の1000件のデータに過ぎないようです。このデータは損害が発生した件数を調べる調査ではなく、1損害当たり何ヶ月分の損害になるのかを調べたもののようです。仮に3万件の損害が発生していても、ここには1000件しか登録されていないのです。そこを勘違いしてました。
そこで現状の事故物件の割合を調べたデータがあり、それによると少し前で3%、最近のデータだと2.1%(振り込み忘れ等のミスと思われる、1ヶ月未満の滞納は除く)とのことです。
ここで、資料の下の方から、一件の滞納当たり、平均で4から5ヶ月分の滞納額になります。これは5ヶ月としましょう。
損害が発生する人が仮に5年住んだ後に支払えなくなったとします。
保証会社の保証料は、契約時に0.5ヶ月から1ヶ月分、1年の更新ごとに1万円から0.3ヶ月の更新料です。
滞納する人が出る割合は、
0.5%×5=2.5%
平均で5ヶ月の滞納額になりますので、滞納の平均月額家賃は
0.025×5=0.125ヶ月分。
不動産屋さん側にすごく不利に見積もっても、家賃保証という保険の平均支払いは12.5%・・・ではないのです。
更にリンクの下の方に行ってほしいのですが、94%は滞納額を全額回収出来ています。全損になるのは3%だけ。
仮に一部返済があったものも全額回収できなかったとして計算すると
12.5%×6%=0.125×0.06=0.0075=0.75%
なんと、これだけ家賃保証会社の支払いが多くなるような仮定を入れまくって計算しても、家賃保証会社は1%すら変換していないのです。勿論、トラブルがあった時の回収や審査にコストがかかるのは分かります。それでもこの数字はいくらなんでもおかしくないでしょうか。
これはカジノ的な控除率の計算で言えば、99%を超える数字です。
1か月以上の滞納になっている人は3%いて、そのうち回収できない金額は6%とすると、5年間トータルで回収出来ない割合は
60×0.03×0.06=0.108(ヶ月分の家賃)
5年トータルで払う保証料は、安いところで0.8ヶ月分、高いところ(自分が今契約しているところは更新料が0.3ヶ月分)だと1.7ヶ月分。
安いところなら、
0.108÷0.8=13.5%
この計算は、還元率が出来る限り高くなるように各種数字を入れました。
1ヶ月以上の滞納を3%ではなく2.1%とし、更に自分が今契約している保証会社のように1.7ヶ月分として再計算すると
60×0.021×0.06÷1.7=4.5%
還元率5%弱、控除額で言えば95%になります。
競馬の控除率は25%
宝くじの控除率は50%
各種保険は30%から70%
家賃保証会社は90%前後!!!
これっていくらなんでも異常すぎませんか?
でもここで、自然な疑問が湧き上がってきます。
そこに新規参入する業者がいれば競争が生まれるのでは?
普通の商売だとそうです。誰だって、同じ商品ならできるだけ安い方を選んで買いたいですよね?
しかし、家賃保証は安い商品を選ぶ事ができないのです!
それはなぜか。
賃貸を借りる際、実際は大家さんと直接契約ではなく、不動産管理会社との契約になります。そして、不動産管理会社は、提携している家賃保証会社しか受け付けないのです。
そう、どんなに顧客にとって魅力的な商品を出したとしても、顧客はそれを選ぶことが出来ない、なぜなら家賃保証会社を選んでいるのは不動産管理会社だから。
実際にお金を払う顧客が商品を選べないなら、当然割高で横並びの金額を家賃保証会社は設定します。更に、顧客の紹介料として、家賃保証会社から管理会社にキックバックもあるとのことです。つまり、
「不動産管理会社も、家賃保証会社の保証料が高いほうが得」
なのです!!!
商品を選ぶ側も商品を売る側も、高いほうが得なので、なんとなく払える金額なら高い金額にしますよね。当然、新規参入者が安い商品を出しても、管理会社に選んで貰えないから競争原理も働かないのです。
しかもしかも、殆どの家賃保証会社は、こんな高い料金を設定しているにも関わらず、一度も家賃もクレカも滞納したことがなく、数年間確定申告し続けている自営業の人の家賃保証を審査で落としているのです。正社員しか受け付けない。
何故か。これは推測に過ぎませんが、トラブルになった際、家賃保証会社の社員の仕事が増えます。審査を通した方が会社にとって得でも、回収という嫌な仕事が増える率が上がる顧客は拒否した方が仕事が楽だからでしょう。また、単体で見たら得でも、トラブルがほぼ無い人だけを入れれば、回収のために雇う人を大きく減らせるという会社の思惑もあるでしょう。
家賃保証会社は今こういうひどい現状です。ただ、不動産管理会社も家賃保証会社も違法な事は(多分)していないです。
このことを多くの人が知って声を挙げない限り、現状が変わること無く、一般の賃貸住人が搾取され続けることになるのです。
3/22追記
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7196/ir_material_for_fiscal_ym/97133/00.pdf
こちらはコメントで頂いた、CASAのデータです。
CASAは、実は自分が以前入居していた時に使っていた保証会社です。ここは大手家賃保証会社の中で
・手数料が(多分一番)安い
・ポーカープロという職業でも審査を通してくれた
という特徴があります。
更新料が年1万円と安く、更にフリーランスでも審査を通すので、前者の平均よりも回収できない割合が高いのではないかと予想されます。
それによると、コロナ以前で19%、今季はコロナの影響で増えて24%という数字のようです。更に訴訟費用等がかかることを考えると、この数字だとまだ若干高いかなとは思うものの、まあ妥当な範囲とも思います。
この表によると、大手の不動産管理会社への紹介手数料は、2020年は20%ほどにもなるとのこと。中小の管理会社へは10%ほど。なかなかひどい数字です。
結局、不動産管理会社が保証会社を選ぶというシステムが非常に良くなくて、各顧客が自分の保証会社と契約し、不動産管理会社はそれを拒否できないシステムになれば、この業界は一気に良くなるんじゃないかなと思います。
追記2
コメントで教えて頂いてます。CASAの滞納発生率は10%強。13社の平均の滞納発生率は7.5%。ということからやはり、CASAが広く保証を受け入れているのは間違いなさそうです。
そのCASAの還元率が19%(訴訟費用込まず)なので、平均的な還元率が13%、更新料が高く、審査でたくさん落とすところだと還元率5%というのは妥当な見積もりということを裏付けるデータだと思います。