木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

ポーカープロという職業と未来

最近のポーカー界隈の話題に乗っかって、ポーカープロという職業について自分が思ったことを書いていこうと思います。

 

https://kihara-poker.hatenablog.com/entry/2019/12/11/172341

以前に、自分的な「プロ」の定義を書きました。これはまあ賛否あるとして、ここで書くのは少なくても、

「ポーカーを収入のメインとして食っていく」

ことについて書いていくのであって、アミューズメントとのプロ契約とかそういうのは無関係の話題です。

 

 

なったことがない人にとっては

・時間的、人間関係的な制約が小さい

・楽しいことをして稼いでいる

・世界中旅行しつつお金を稼ぐことができる

と、どうしても良い面ばかり目に入ると思います。

じゃあ実際に長くプロをやっている、かつ、生き残ることが出来ている立場から、ポーカープロとはどういう職業で、なったことがない人にはわからないようなどういうメリットやデメリットがあるのか、を書いていこうと思います。

 

まず、上に書いた3つ。これは確実にメリットです。

それから、あまり言われないのですが、びっくりするような有名人と知り合いになれるというのもメリットです。

ポーカー界の有名人は当然として、様々な会社の社長やオーナー、サッカープロ、オリンピックで金メダルを20個以上取った水泳プロ、ハリウッド俳優・・・

アメリカのバンドで、日本公演もするような人に、日本でのライブに招待されたこともあります(自分の人生初ライブ)。

 

個人的には、こういうつながりの方が、最初の3つより価値が高いと思います。

だって、時間的な制約は小さいとは言え、なんだかんだ毎月200時間くらいポーカーをするわけで、それってポーカーが好きじゃないと制約から逃れてませんし、ポーカーテーブルで嫌われたら損するから人間関係からも逃れられないし、それだけ長時間打ったら苦痛と思う人なら楽しく稼ぐとはならないし、世界を旅行と言ってもポーカーがないところにはいけないわけです。

意外とその3つは、

「ポーカーが好きで好きでたまらなくて、毎月250時間とか全然苦痛じゃないよ」

って人じゃないと全然メリットになってくれないのです。

 

 

じゃあデメリットです。

・収入が不安定

・周囲の人の理解

・メンタル

・将来への不安

 

でしょうか。

順番ですが、最初に書いたものほど「たいしたこと無いデメリット」です。

収入が不安定な点。確かにポーカーは分散が大きいですが、強くなれば分散を十分に補うだけの資金がたまります。また、本当に強ければダウンスイングも短くなります。

収入の不安定さが気になるのなら、それは大体が実力不足です。逆に言えば、スキルが十分ならここは何も問題ありません。

 

2つ目を飛ばして3つ目。

自分は2011年3月に大学を卒業して、そのままポーカーだけやる生活に入ったわけですが、2011年5月に鬼のような下振れに合いました。ちょうど2σと3σの間くらいの下振れだったのですが、一ヶ月で結構負けました。この時って打てば打つほど負けるような感じだったのですが、

「ポーカーしかしてないのに、そのポーカーで負けてるなんて、なにやってるんだろう・・・」

と、本当にメンタル的にきつかったです。かと言ってプレイしないわけにはいかない。

大学がある時期なら、大学の勉強が息抜きになったかもしれませんが、ちょうど卒業して本格的にプロになったばかり。

そして、メンタルがきつい状態だと、プレイも悪くなるんですよね。まさに悪循環。これ、言葉にするのは本当に難しいけど、相当きつい状況でした。

自分はメンタル強そうに見えるでしょうし、実際自分でもそうだと思うけど、それでもこういう感じだったのです。

 

4つ目。

ポーカーはどんどんレベルが上がります。若く強いプレーヤーがどんどん登場してきます。

その一方で、人間はどんどん歳を取り、能力的に落ちていきます。

どんどんレベルがあがる世界なら、自分自身も同じくらいレベルアップしていかないといけないです。しかし、歳を取ると能力は衰えていきます。

また、いつまでもポーカーの人気があるという保証はありません。

当たり前ですが、どんなに強くてもポーカー自体が廃れたら食っていけなくなるのです。

 

ポーカーが廃れても食っていけるような何らかのものを確保しつつ、現状のレベルアップについていかないといけないのです。歳を取りながら。

 

 

戻って2つ目。

分散に耐える資金を持ち、メンタル的にも強くなり、覚悟を決めてプレイし続ける。

一人だけならそれでも良いでしょう。

しかし、家庭をもつと色々話は変わります。

ポーカープロと結婚するような人は、元々こういう職業に理解がある人なのは間違いないです。しかし、3つ目4つ目の不安と言うのは、奥さんにも降りかかるのです。短期的な下振れは、心では理解していても、本人ですらツラいものです。それが、生計を配偶者に依存していた場合、その不安はずっと大きいものだと思います。さらに4つ目、これは誰が見ても明らかに来るデメリットです。それを自分では対処できないストレスって相当なものでしょう。

これに関しては自分は実感できないですが。

 

更に、失業保険もありません。職歴もありません。40過ぎて、やっぱり普通の職業に戻ろうと思っても、それに向けてしっかり準備してないとなかなか難しいものがあるのです。

 

 

それらを全て覚悟した上で、それでもポーカーが好きすぎて毎年3000時間打っててもポーカーは飽きない!と思えるくらいならば、試しにやってみるのは良いかもしれません。

 

「今はこういう状況なんだけど、ポーカープロとしてやっていけると思いますか?」

「ポーカープロとしてやっていくには何を勉強したら良いですか?」

と聞かれることがそれなりにあります。そういう質問が出る時点で向いてないです。

上に書いたような覚悟がなしに、ポーカープロは楽そうだから、とかでこの世界に入って来るのはまず失敗します。

普通に職業を持って、趣味としてポーカーをやる。強い人は長期的にお小遣いになる。

これが殆どの場合一番良いポーカーとの付き合い方なんじゃないかなと思います。