先崎先生著
「うつ病九段」
読みました。
自分はうつ病で薬を処方して貰ってるという人を何人か知ってます(自分が知っている人は躁鬱病が多かった)し、それなりにうつ病に対して知識はあったつもりです。
やる気とかの次元ではなく、本当に身体が動かなくなるというのは知識では知ってました。そして、その方向に関しては自分の想像の範囲内ではあったのですが。
少しネタバレになってしまいますが、先崎先生が
「簡単な7手詰めの詰将棋が解けなくなっていた」
とあったのが一番の衝撃でした。
プロ棋士にとって7手詰めが解けないというのは、一般の人が13+8が解けなくなった、というようなものです。うつ病によって人間の能力が多少落ちるのは分かってましたが、まさかここまでとは知らなかったです。あまりに衝撃を受けました。
もちろんある程度以上重い方の症状なのは間違いありません。
それでも、先崎先生は1年弱で概ね回復するくらいでもまたあったわけです。お兄さんが優秀な精神科医だったり、家計を心配する必要なしに十分な治療が受けられる環境だったのが幸いしたのも間違いないでしょうが。
「うつ病は心の病気ではなく、脳の病気である」
と本でもありましたし、よく聞くことでもあります。
この例から、本当に脳に直接的なダメージがある病気なのだとすごく納得がいく、そしてうつ病を少しだけまた理解出来た気がします。まさに、足を骨折した状態で走ることを強要されるようなものでしょうか。そして、足を骨折することは誰にでも起こり得る・・・
とても色々考えさせられる本でした。
「うつ病は甘えだ!」と今でも心のすみに思っている方、是非一度読んで見てください。羽生さんと同世代でありながら、羽生さん以上の天才と言われ、将棋だけじゃなく文才にも恵まれ、傍から見たらうつ病にかかるとは想像もつかないような先崎先生のありのままの苦悩が描かれてます。