木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

トーナメントの入賞直前のオールインとバブルファクター

kihara-poker.hatenablog.com

 

「ライブトーナメントのレイトレジスト」の話の続き1です。

バブルファクター(BFと略します)というものを解説したいと思います。

 

1500ドルWSOPイベントで、1000人参加。賞金総額は1500×1000×0.9=135万ドル。

デイ2進出。するとそろそろ入賞が見えてきます。

 

次の日、1時間プレーして154人残り150人入賞。アベレージは30bb。

同卓の有名プロがアベレージの1/3、10bbのスタックでBBにいます。

そこで、テーブルチップリがボタンからオールイン。

SBの10bb持ちのショートスタックはフォールド。有名プロはQToでコール。チップリはA3oを持っていて、両者何もヒットせず、プロは敗退してしまいました。

 

こういうシチュエーションを見たことがある人、多いんじゃないでしょうか。

後一周フォールドしたら、最低賞金の2250ドルが確定します。今飛んだら賞金は0です。なので、一周、3bbほど無駄にしたとしても、入賞を確定してから勝負をする方が期待値は高いのです。なのでこういう状況の時、チップ量が少ない側は相当高い勝率がないとコールすることは出来ないのです。

ざっくりと計算してみることにしましょう。

WSOPの場合は、15%の人が入賞、最低賞金はバイインの1.5倍です。ざっくり総賞金合計の22.5%です。しかし、10%は運営手数料で取られるので、全体の賞金プールは人数×バイインの90%です。なので、ちょうど25%、1/4が最低賞金に分配され、生き残ったプレーヤーは残りの3/4をかけてそこからまた戦うのです。

有名プロはここで一周降り続けると、入賞する時は8bb持ち位でアベレージの1/4強。バイインを1とすると、その時の期待値は

2250+135万×3/4÷150×8/30=2250+1800=4050ドル。

(確定賞金)+(賞金の残り分)÷(残り人数)×チップ割合

賞金総額の残り分÷残り人数は、アベレージのスタックを持っていたら賞金は平均でどれくらい上乗せされるかという式です。実際はこの賞金よりちょっと高めを貰えるでしょう。というのは、ショートで生き残って賞金が上昇することがありますので。

有名プロがここで勝負をして勝った場合、スタックは22bbくらいになります。オールインで勝った時の賞金は

2250+135万×3/4÷150×22/30=7200ドル。

なので、4050÷7200=0.5625

56%強の勝率がないとコールできないのです。

QToは相手が100%でオールインしてきているとしてやっと際どいくらいで、23oとかの弱すぎるハンドをチップリが降りているとすると、まずコールできないハンドなのです。

仮に勝率50%のオールイン勝負を受けたとすると、7200×0.5=3600ドルなので、4050-3600=450ドルも期待値を損してしまうのです。

 

では、具体的にバブルファクターとは何かというと、降りた場合、残りの9bbのスタックの価値は4050ドルです。一方、コールして勝ったら22bbなので、13bb増えます。この13bbの価値は7200-4050=3150ドルです。

1bb当たり、降りた時の残りのスタックは450ドル、増えたスタックは240ドル。

降りた残りのスタックの価値の方が高いですよね。450÷240=1.8倍ほど。

この時、バブルファクターは1.8である、と言います。

キャッシュゲームでは残りのスタックも増えたスタックも一緒の価値なので、バブルファクターは常に1です。

トーナメントでは、常に小さなバブルファクターがかかってます。トーナメント開始時はほぼ1ですが、入賞直前になってすこしずつ上昇。入賞直前はスタック分布によって大きく変わり、降り続けたら入賞が確定の超ショートが一番高いバブルファクターになります。入賞した後は、アベレージ持ちなら1.1程度ですが、ファイナルテーブルになると順位がひとつ上がるごとに賞金が大きく上昇するので、1.4から1.5くらいになるのです。