木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

リミットゲームとポットリミットゲームの戦術の違い

多くのミックスゲームはリミットで行われます。

多くのプレーヤーは、慣れてないゲームでもリミットなら打っていいかなと思うのもありますが、ポットリミットの慣れてないゲームはやっぱり抵抗があるんですよね。

 

しかし、一部のドローゲームとフロップゲームは、たまにポットリミットで行われることもあります。

オマハハイローはリミットだけじゃなく、ポットリミットもかなり一般的です。しかし、2-7TDなどはポットリミットはあまり一般的ではありません。

しかし、WSOPのBigBetMixやDealersChoiceイベントでは2-7TDのポットリミットもゲームの中にあります。

一般的に言って、ポットリミットとリミットでどうプレイが違うのか、それをホールデムと2-7TDを元に書いてみようかなと思います。

 

 

まず、既に多くの人がNLHEを元に書いてますが、ノーリミットやポットリミットのビッグべットゲームにおいては、エクイティが多少50%を切っていても、レンジがポラーされている方が強いです。

レンジがポラーされているというのは、平たく言えば、

「勝っているか負けているかが、自分のハンドだけでほぼ分かる」

ということですね。ポラーと対称的なのは、レンジがリニア(線形)であると言うことです。

平たく言えば

「そこそこの強さのハンドを持っていて、勝っている可能性がそれなりにはあるが、相手のハンド次第で勝っているか負けているかが大きく変わる」

なのです。

ブラフが少なすぎる相手だと、リニアなハンドを持っていても打たれたら負けていると判断しやすいからリニアであるデメリットが小さいし、ブラフが多すぎる相手だと、リニアなハンドでコールしておけばまあOKなのでプレイは簡単です。リニアなハンドを持っていて、相手が強いときが難しいんですよね。

ちょっと厳密な言い方ではないですが、ポットリミットゲームなら、最後に勝率34%あれば、最後に2対1でブラフを打つことで、34%側なのに期待値は51%相当になります。ポラーであることはそこまで強力なのです。

逆に言えば、勝率66%でリニアなレンジを持っていて、相手がポラーなレンジなら、実質的に49%しか勝率がないのと変わらないとも言えるのですね。

一方、リミットゲームなら、リニアなハンドは非常に価値が上がります。というか、元の勝率通りの価値に近くなるという感じでしょうか。

 

では、2-7において、リニアな強さのハンドとはどういうものでしょうか。

それは、

「9パットや87パット」

のようなハンドです。そこそこ強いけど、相手の強いドローに対して非常にツラい。

 

 

2500ドルバイインのようなイベントでも、2-7TDで、2479xで9を残し、1枚チェンジにしてできるだけ早くハンドを完成させようとする人が結構います。

そのプレイは、上にあげた、リニアなハンドを作るプレイなので、ポットリミットにおいては非常に良くないのです。

「リミットホールデムはドローハンドが安くドローできるので強くなる」

というのが勘違いであると以前書きました。

https://kihara-poker.hatenablog.com/entry/2018/05/29/113000

 

強いドローの価値は、ポットリミットこそ高くなるので、リミットで2479xの9をチェンジするなら、ポットリミットでは尚更9はチェンジしないと行けないのです。

そして、一度でもこういう9を残すプレイをしたのを見たら、その後絶好の攻撃ターゲットです。セカンドドロー後にチェックレイズポットを打ったり、最後に微妙な86くらいで大きなバリューベットを打ったり、またブラフしたり出来るのです。

 

強いドローハンドとブラフ、セミブラフ。マージナルなハンドでポットを膨らませない忍耐(フリーカードを与える勇気)。そして、強いドローハンドを手にしたときに大きなポットをプレイすることをいとわない勇気。これらが、ポットリミットゲームをプレイする際に必要なものなのです。

 

ポーカーとは?ポーカーが強いとは?

日本では、ポーカーと言うと、未だに5枚配って1回チェンジする

「5カードシングルドロー」

だというイメージがあります。

 

このブログを読んでいる人は、5ドローは世界ではかなりマイナーなゲームであって、一番メジャーなのは

「ノーリミットテキサスホールデム(NLHE)」

だと知っているでしょう。

 

しかし、当然ポーカーはテキサスホールデムだけではなく、PLOもあればスタッドもあれば2-7、Badugi、Drawmaha、Archi、その他たくさんのゲームの総称です。

 

ポーカー>NLHE、PLO、・・・

という関係なのですね。

 

とはいえ、ポーカーライト勢(数字は適当だけど、ざっくり週平均10時間以下)の殆どにとっては、ポーカー=NLHEというイメージでしょうし、ライト勢がそう思うのは問題ないと思います。

そして、そういうポーカーライト勢がたくさん集まるアミューズメントポーカーにおいても、

「一番ポーカー強いのは誰だ」

的なイベントでNLHEだけを意味するのもまあ自然だと思います。個人的にはPPC(poker players championship)という名称だけはミックスゲームであってほしいとは思うけど、まあアミューズメントなので仕方ないかなとも思ってます。

 

 

一方で、ガチ勢ならば、そこは使い分けて欲しいなあとも思うのです。

「俺は○○(有名プロ)よりポーカーが強い」

とか豪語するなら、NLHEだけで言うべきではないと思いますし、NLHEだけで言うなら

「俺は○○よりNLHEが強い」

と言うべきです。

まあ、NLHEと言っても、キャッシュならライブキャッシュゲームなのかZOOMなのか。アンティがあるのか無いのか。スタックはどの程度なのか。MTTなら、ストラクチャーの速さ、KOの有無、サテライト形式なのか。

それらを総合してNLHEが強いとなるべきじゃないかなと思うのです。

ついつい人間は、自身がメインで打っているゲームがポーカーの中心であると思いがちです。でもそんなことないのです。

勿論、NLHEを100時間プレイした後で

「今月ポーカーを100時間プレイした」

と言うのは合ってます。ポーカー>NLHE、PLO、etcという関係なので、ポーカーの中の何を100時間プレイしても、ポーカーを100時間プレイしたことに違いはありません。当然PLOやミックスゲームを100時間プレイしても、ポーカーを100時間プレイしたのは正しいですよね。

 

ちなみにですが、「ホールデム」と言ってしまうと、本来はコミュニティカードを使うポーカー全てを意味します。

つまり、NLHE、FLHE、PLO、FLO、FLO8などなど、全ての総称がホールデムなのですね。

しかしまあ、一般的には

ホールデム」と言うと、「テキサスホールデム」を指します。あくまで一般的な略称です。なので、

「○○よりホールデムが強い」

と言うのは、NLHEとFLHEが総合的に強ければ言って良いでしょう。

NLHEメインの人は、

ホールデム=NLHE」

としすぎますが、ミックスゲームの人的には

ホールデム=FLHE」

であって、NLHEの事は「ノーリミット」と呼びます。

 

 

せっかくの機会なので、ミックスゲーム界隈でのゲームの略称を紹介します。右側が呼び方で、左が世界一般で通じて誤解されない略称です。

 

NLHE=no limit

FLHE=hold'em

PLO=PLO

FLO8=omaha, omaha eight, omaha hilo

PLO8=PLO eight

Stud=stud

Stud8=stud eight, Stud hilo, hilo

2-7TD=deuce, deuce to seven, triple draw

A-5TD=ace to five

Badugi=badugi

NLSD2-7=no limit deuce

 

こんな感じですね。

deuceとだけ言ってもtriple drawとだけ言っても、2-7TDを暗黙の了解で意味しますし、omahaとだけ言ったらFLO8を意味します、PLOではなく。

単にhiloと言ったら、スタッドハイローを意味します。

no limitと言った時、よくプレイされるのはNLHEとNLSD2-7ですが、そこはメジャーなNLHEにno limitの略称は譲り、NLSD2-7はno limit deuceと一言付け加えます。

 

このミックスゲーム界隈の呼び方が正しいと言うつもりは全くありません。

しかし、

「ポーカーと言ったら、ノーリミットホールデムだ!」

ホールデムと言ったら当然NLHE以外にないでしょ!」

オマハと言ったらPLOを意味するに決まってるじゃん!」

と思うのは、あくまでポーカーの(多数派ではあるけれども)一部のコミュニティーに過ぎなくて、それが世界共通で通じる略称だと思いこむのは間違いなのです。

 

 

それなりの頻度で

「木原よりポーカーが強い」

的な言葉を目や耳にするので、

「100歩譲ってもNLHEじゃね?それでも本当にそう言える人はめっちゃ限られると思うよ」

と自分は思ったりもするのです。

ちょっと話題になったので、便乗して常々思っていることを書いてみました。

 

ミックスゲームの勧め、NLSD2-7

ちょっとマニアックなゲームを紹介します。ただ、このゲームは

「最もピュアなポーカーである」

と言われることもあるくらい、本当に純粋なポーカーの実力が問われると言われているゲームです。

 

それはNLSD2-7、no limit single draw deuce to seven です。

まず、2-7については

こちらの記事を参考にしてください。
 
2-7TDでは、トリプルドローというように、3回チェンジします。
NLSD2-7はシングルドローというように、チェンジは一回だけです。
普通に5枚配って、NLHEと同じようにアクションします。
プリドロー(プリフロップ、と同じイメージで)が終わったら、ポジションが悪い方から順に1回チェンジします。チェンジする枚数は何枚でもOKです。
そして、ポストドローはいきなりリバーなのです。
 
べットはノーリミットなので、プリドローでオーバーべットオールインもあれば、ポストドローでオーバーベットもあります。
勿論、すごく小さいべットもアリです。
そして、一般的には高いアンティでプレイすることが多いです。
一番普通なのは、SBの半分ですね。
6人でプレイしたらアンティが全部で1.5BBになります。かなり大きいです。
 
因みに、ライブではリンプができず、2bb以上で参加しなければならないというルールになっていることが殆どです。まあこれは慣習ですね。
 
このゲームは、感覚的にはプリフロップとリバーのみのNLHEという感じでいれば良いです。大きな違いと言えば、ボードがないのでレンジという概念が非常に薄いです。どの程度の頻度で相手がブラフするか、こちらがブラフするか。どのハンドでバリューベットを取るか。そのサイズはいくらが適正か。
NLHEはベットラウンドが4回あるので、必然的に途中でオールインになったりしますが、NLSDは差が出るのがドロー後、いわゆるリバーです。また、ベットラウンドが2回しか無いため、リバーの比重が非常に大きいのです。
考え出すと本当にキリが無くて深い、まさにポーカーの王様と言って良いゲームなのです。
 

価値観と経済と

コロナ対策で、西浦教授が

「全く対策を取らなかったら日本で42万人死亡」

という試算を出して、色々賛否あったのは記憶に新しいところです。

 

結構この予測を批判する人も多いけど、割と全ツッパ寄りの自分はこの予測、正当なんじゃないかなと思います。

政府と国民がこれだけ対策を取って、もう少しで1000人に到達しようかという状況です。もし政府が全く対策を取らなかったら?

おそらく一桁上の結果になったでしょう。

ところで、「全く対策を取らなかったら」というのは、主語が政府だけじゃなくて国民もです。感染症が流行っていたら、政府が対策をしなくても、当然国民(特にハイリスク層)は自主的に対策を取ったでしょう。そう考えると、国民が対策を全く取らなかったら更に一桁上、というのはすごく合理的な数字だと思います。

 

42万人がコロナで亡くなる。これは勿論悲劇的なことです。

一方で、強い対策を取ったことによる経済被害は100兆円とかそういう規模です。

対策を取らず、42万人が亡くなった場合の経済被害について、3兆円という試算があります。3兆円???と思うかもしれません。また、命をお金で換算するなと思うかもしれません。ただ、それを一旦置いておき、その試算が妥当かどうかだけ考えます。

 

コロナが流行していて医療機関がパンクしていることで、二次的な被害も想定されます。

しかし、コロナが無くても、そもそも日本では年間130万人が亡くなるのです。

42万人って30%でしかないのですよ。

更に、42万人のかなりの割合は、いずれにせよ130万人に含まれる人であろうことは間違いないです。実際は15%から20%増ってところでしょうか。

そう、毎年130万人亡くなって、その前提で経済は語られているのです。その前提で、2,30万人多く亡くなることによる経済損失ってそこまで大きくないんですよね。しかも、引退世代がほとんどですから。

勿論、亡くなる以外にも、後遺症の話もあります。ただ、3兆円というのは後遺症まで含んだ数字です。

 

毎年日本では、階段からの転落事故だけで毎年4桁の人が亡くなってます。そして、命は助かっても、感染症とは比較にならないくらい、階段からの転落は後遺症も多く重いです。1億人以上の人口を持つ日本からすると、これくらい限定した事故であっても4桁とかは普通なのです。人が亡くなることって、それくらいありふれたことなのです。そもそも、人間は必ず死ぬのです。

 

 

医療従事者は、勿論お金の為に働いているのは当然ですが、それでも平均よりかなり、個々の命を大切にする価値観を持っているからその職についている割合が大きいのです。

自分はなろうと思えば医者になれました(実際医学部に合格はしてます)が、なるつもりは最初からありませんでした。収入は良くても価値観が違ったからです。

 

 

仮に無対策状態だった場合で、生産世代から2万人亡くなったとしましょう。

一方、現状の対策を取って、2万人の生産世代の命が救われるとします。この騒動の為に、感染しても被害が本当に軽微な子どもたちが、騒動の犠牲になってます。保育、教育、スポーツ、その他・・・この状態では、子どもを作るのを一旦中断しようと多くの親が思うことで、仮に10万人子どもが減ったとしましょう。

これ、自分としては、8万人の命が失われたと感じるのです。

医療従事者は、目の前で患者さんが亡くなるのを目にすることもあり、現状生きている人の命を優先します。また、価値観もそうなります。それは当然です。

一方政府は、諸々を総合的に判断しないといけません。

経済だけを考えるなら、世界中がコロナを完全に無視して動くのが明らかに最善です。しかし、経済だけを考えることは政治の世界では許されません。じゃあどの程度対策を取るか。完全に価値観の問題なのです。

 

 

その上で自分の価値観としては、政府として無対策でいることによって数万人の死者というのは致し方ないと思いますし、アメリカやヨーロッパなどはそういう方向に舵を切り始めました。それも当然予見できた未来です。

ワクチンが出来ない限り、コロナウイルス自体は絶対に無くならないと自分は思っています。そして、それは多くの医療重視者も合意することでしょう。

ここから先は価値観です。どの程度、瞬間の犠牲を受け入れるか。どの程度長期的な犠牲を受け入れるか。

短期的な強い対策は同時に、長期的には産まれるはずだった子どもを犠牲にしているのです。

国民個人としては、ある程度短期的な対策しか取りようがない。しかし、世界各国政府は、もっと長期的な視点で考えるのが正しいのではないかというのが自分の価値観です。

とはいえ、それは民主主義的には政権が倒されてしまうことにもつながるので真に長期的視点のみで動くのもまた難しいのですが・・・

 

 

 

 

職業や人の貴賤とポリティカルコレクトネス

最近、政治的正しさ、ポリティカルコレクトネスに関して色々世間の目が強くなっています。

例えば

・人間は皆平等

・ハラスメントは良くない

・職業に貴賤はない

その他多数。

 

https://twitter.com/key_poker/status/1268539818805473281

https://twitter.com/key_poker/status/1268540009885454336

 

これは以前とったアンケート。

合理的に考えると、

「○○県はOKで、××県はダメ」と「○○国はOKで、××国はダメ」

ってのは、全く同じであるべきですよね。でも、回答は結構違うし、違った回答になると思ったからこそ自分もアンケートにしてみたわけです。

とはいえ、ポリティカルコレクトネス的には差別に当たるから、おおっぴらにこれらを合理であると発言することははばかられるし、ましてやメディアに出る人は心で思っていても絶対に発言出来ないことでしょう。

 

「社長と社員は、会社の内部で立場や役割が異なるだけであって、人間としては平等である」

これも、ポリティカルコレクトネス的には正義とされる発言でしょう。

しかし、実際どの程度の人がこれを本音で肯定しているのでしょう。

 

一般的に、被差別側はポリティカルコレクトネスに敏感、繊細になります。ポリティカルコレクトネスが当然になったら得をするので。

一方、特権階級側は

「ポリティカルコレクトネスは建前に過ぎない」

と思う割合は多いでしょう。特に自分自身が努力してきたことでその地位を確立した人は。

 

ポリティカルコレクトネスに敏感な側は、建前だと思って行動する人を空気の読めない気持ち悪い人と思うし、建前に過ぎないと思っている人は、自身の特権だと思うがゆえの行動がどれだけ気持ち悪がられているかになかなか気づけないです。

ポリティカルコレクトネスに敏感な側の行動は、建前に過ぎないと思っている人からするとうざいと思うし、ポリティカルコレクトネスが絶対だと思っている人は、子供の頃から努力して特権的地位を勝ち取った人の背後の努力になかなか気づけないのです。

この対立って、世界のあちこちで見られるものだと思います。

 

ポリティカルコレクトネスって、一つの正義です。

しかし、正義が対立するのは悪じゃなくて正義です。

「努力したりリスクを負って勝ち取った資産や地位は正当に評価されるべきである。それが世界の発展につながる」

というのも一つの正義なのです。

 

上の国や県のアンケートについても、国というものを一つのまとまりと見なす人が多いことの現れかなと思います。県については同じ国民だから差別、でも国籍に関しては、過去の自分と同じ国の先人の行動の結果である、という感覚。

 

 

職業の貴賤はあるか、という話があります。コロナ騒動で、更にそれが可視化されたように感じられます。

「職業に貴賤はない」

「社会のために役立っている職業は高く評価されるべき」

この対立ですね。

自分のポーカープロという職業は、明らかに「賤」に分類されるでしょう。

「お前は何も生産してないじゃないか」と何度言われたことか。

 

しかし、それは一つの正義に過ぎない。正義を主張する時は、相手に悪を押し付けようとしているけど、よっぽどのことが無い限り、世間全体が総意として認める悪なんてないんですよ。

姥捨て山の故事は知ってると思うけど、今の時代なら当然犯罪だし、認められない。しかし、昔の生活が厳しかった時代だと、致し方ないことだったわけです。

ポリティカルコレクトネスというのは、世の中が豊かになってきたことによって初めて存在できるようになったわけで、世の中が豊かになったのは「職業に貴賤はある」と思っていた世代の経済活動の結果なのです。

 

 

どんな正義感を持っていても構わないと自分は思います。

ただ、世の中を賢く生き抜く上で、自分の正義感と違う正義感の存在についても学ぶべきだし、同調は出来なくても理解すべきだと思うのです。

それが出来ないと、「非常識なやつ」や「老害」となるんじゃないかなと。

 

一方で、自身の正義感を他人に押し付けようとするのは慎重になるべきです。ポリティカルコレクトネス側も老害側も、どちらも価値観の押し付けが激しい。

そして、そういう人が身近に居たら、仮に自分自身と近い正義のスタンスの人であっても、ある程度の距離を取って付き合うのが得なのではないかと思うのです。

 

まあ、この意見も自分の「正義感」に関する正義に過ぎないです。ただ、正義感は押し付けようとしても広がらない。共感、同意してもらって、同じ側に入ってもらおうとする、それが大切なんじゃないかなと思います。

 

チップEVとICMと現実的な期待値見積もり

https://kihara-poker.hatenablog.com/entry/2018/03/20/150007

https://note.com/kihara_poker/n/n825dcbbfabda

 

バブルファクターに関する記事は過去にいくつか書いてきました。

 

そこで質問を貰って、確かに面白い話だなと思ったので、詳しく色々書いてみようと思います。

 

https://twitter.com/CHIYO_de_poker/status/1283678514449838081

https://twitter.com/CHIYO_de_poker/status/1283679077505761281

 

まず、アベレージ付近の期待値を、

「残りの賞金÷人数」

と見積もることの是非ですね。

 

100ドルトーナメントで500人参加。50人残り。70位から200ドルの賞金が確定してて、次の賞金上昇は45位としましょう。

プライズプールは50000ドルで、既に14000ドルが配られています。なので、残りの賞金は36000ドル。

ここで、確率的にはほぼあり得ないことですが、50人全員が初期スタックの10倍のチップ量だったとしましょう。

すると、残っている人の期待値は全員一緒なので、一人あたりの期待値は、

36000÷50=720ドル。既に確定している200ドルを入れるなら、920ドルが期待値です。ここまでの話に異論がある人はいないでしょう。

 

もし賞金が優勝者総取りなら、チップ期待値がそのまま賞金期待値になります。

しかし、現実的には賞金はもっとなだらかになります。ポーカーはゼロサムゲームなので、賞金がなだらかになることで得する人と損する人が出てきます。

得する人は、ショートスタックです。順位が上がったら賞金が上がりますからね、優勝しなくても。逆に損する人はビッグスタックです。すぐ飛ぶ心配がほぼない状態なら、しばらく賞金が上がらない方が得ですから、逆に言えば賞金の階段があるということはビッグスタックにとって損なことです。

 

ではアベレージスタックはどうでしょう。

50人残りで全員アベレージという状況から、20人がアベレージの半分(スタートチップの5倍)、20人がアベレージの1.5倍(スタートスタックの15倍)という状況を考えて見ましょう。

次の階段まで到達出来る可能性は、全員アベレージのときと比べてあがるでしょうか、下がるでしょうか。

ショートが増えるので階段まで上がりそうな気もするけど、でもオールイン負けしたら飛ぶという人自体が減ります。全員アベレージなら、オールインが入ったらチョップじゃない限り基本的に誰か飛ぶけど、ショートとビッグスタックなら、ビッグスタックが勝たないと飛ばないので。

うーん、得か損かわからないですよね。ってことは、アベレージ持ちなら、残りのチップ分布が平たくても差が開いてても、そこまで期待値的に変わらないと言えそうです。

ってことは、アベレージ持ちなら、期待値は

「残りの賞金÷人数」

としてそこまで誤差はないということになります。

 

では、ショートスタックの期待値はどう見積もるのが良いでしょうか。

アベレージの3割の人がいたとします。

賞金分布がなだらかであることで、アベレージ持ちの3割より高い期待値があります。これはICM的な期待値です。この数字は、賞金分布がなだらかであればあるほど高くなるし、賞金の階段が近くにあれば高くなるし、他の人のチップ分布によっても若干影響があります(ダントツチップリがすごいチップを獲得していれば高くなる)。なので、一般的にいくらとかは絶対に計算出来ないのですが、ただアベレージ(720ドル)の3割(216ドル)よりは高いのは間違いないです。

具体的にいくらと言われると難しいですが、一般的な賞金分布だと、イメージ的には3割だと216ドルの15%増しくらい(248ドル)でしょうか。アベレージの10%(72ドル)なら、3割増しくらい(93ドル)とか?アベレージの7割だと504ドルよりわずかに高い520ドルとかでしょうか。まあ、数字はざっくりです。

 

ところで、MTTではアンティがあります。アンティの存在によって、ドショートはチップEVが見た目のEVより高くなるのです。

https://kihara-poker.hatenablog.com/entry/2020/05/18/124150

 

一方、チップのICM的な期待値がチップEVより高いということは、高いバブルファクターを受けているとも言えるので、相手からオールインされた時の必要勝率が、チップEVより高いのです。5bb持ちで降りたら4bb。コールしてダブルアップしたら12bbだとして、チップ的には3倍になるから33.3%の勝率で良いけど、ICM的には38%必要、とかになるのですね。上の補正の○割増のボーナスが減るのです。

ドショートだと、いずれにせよ一回はオールインに勝たないと階段の賞金上昇すら見込めないので、BBでチップEVプラスの勝負をしたりすることになりますので、ここの部分でICMから更にプラスの補正をすることになりそうです。

一方アベレージ半分とかなら、チップが減った時にそういうドショートであるプラスの期待値が得られることと、現状で高いバブルファクターを押し付けられてチップEVが若干損してしまうことの両方の要素があって、チャラくらいとするのが良いのではと思います。ターボMTTなら、ショート側はよりドショートのメリットを享受する可能性が上がり、長いMTTならショート側はBF押し付けによって損する部分が増えそうなので、これはストラクチャーにも依存しますね。

 

 

まとまりがない長文記事になってしまいましたが、MTTでどうやって現状の期待値を見積もるかという話でした。

 

ポーカースノーウイーとポーカーの勉強

ポーカースノーウイーが有用かどうか、についてポーカー界で議論がありました。それについて自分の意見を書きたいと思います。

 

多分、ポーカーの勉強と言った時に、ハードルが低い順に

・実戦

・本

・Preflop Solver

・スノーウイー

RIO

・PioSolver

(別枠、仲間との議論)

 

の順じゃないかなと思います。

まあ、英語力の有無とかでRIO当たりはかなり上下するかと思いますが。

 

 

スノーウイーの圧倒的な利点として、ハードルが低いことだと思います。

何もわからない状態でポストフロップをどう勉強するかという話になった時に、スノーウイー以上に簡単に学べるのって難しいです。本は有力ですが、どうしても内容の少なさと情報が更新されないこと、自分が疑問に思ったことをダイレクトに調べる方法の無さなどが挙げられます。

一方スノーウイーは、ポーカーの知識が無くてもオススメのプレイを出してくれます。初心者でも、何が有力なプレイなのか知る事ができるのです。

 

 

次にPioSolverです。

今、NLHEで強くなっている人は、ほぼみんなPioSolverを使ってます。

これって、自分で色々設定をしないといけなく、そこを適当にすると何を解析しているのかわからなくなります。良くも悪くも、自分の頭で考えないとそもそも使うことが出来ないのです。逆に、細かい設定を自分でいじれるので、べットサイズを変えてみたり相手のプレイを変えてみたり、出来ることは多いです。

これはPioSolverの利点でもあり、欠点でもあります。

 

しかしですよ、ポーカーがプロ級に強くなる人は、自分の頭で考えることが自然に出来るのです。そういう人は、スノーウイーとソルバーを両方使ったら、当然ソルバーの方が良いと感じるでしょうし、強い人に聞くとソルバーという回答が返ってくるのは当然だと思います。

 

スノーウイーは良くも悪くも、無思考、あまり頭を使わずに使えるのです。勿論しっかり頭を使って考えたら有益だと思います。しかし、しっかり頭を使って考える事ができるならソルバー側が使いやすいというのもまたそうでしょう。

 

ただ、そもそも頭を使わずに強くなりたいって言う事自体が虫が良すぎる話でもあって、ある程度で頭打ちになるのも普通かなと思います。それは結局、スノーウイーを使っているからではなく、自分の頭で考えていないから強くならないのです。

そして、自分の頭で考えるなら、ソルバーのほうが良いでしょう。

 

 

ところで、ポーカーとの付き合い方って、別にトップクラスを目指すことだけじゃないはずです。

仕事の息抜きの趣味として気楽にやりたいけど、でもある程度は強くなりたい。ある程度強くなって、たまに行く海外キャッシュゲームやトーナメントで期待値プラスで遊びたい。そういうスタンスの人ってむしろ大多数なんじゃないかなと思います。

そういうポーカーとの付き合い方ってかなりアリだし、そういう人にとっては自分でウンウン考えながら色々いじるより、わからないと思った時に気楽にスノーウイーの意見を見るだけ、というスタンスは良いのではないでしょうか。

 

 

結局、ポーカーにどの程度時間とお金と思考力を投資してどこまでの成果を求めるかでしょう。

スノーウイーは弱レグを作る、というのはかなり事実だと思うけど、上を目指すつもりがなくフィッシュから弱レグへ昇格するのは、それはそれで価値があることだと思います。どうしてもガチでやっていると、強ければ強いほど良いと思いがちですが、ちょうど自分の将棋のようなスタンスは一つのポーカーとの付き合い方なのです。