木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

ポーカーAIは駆け引きをしない

ポーカーAIのニュースが流れてから、関連のツイートで

「ついにAIが駆け引きを出来るようになった」

というようなツイートをかなりたくさん見ました。

それについて、非常に大きな勘違いであることをはっきりと言いたいと思います。

 

まず、多くの人が理解しているように、人間同士のポーカーの勝負はかなりの部分で駆け引きが存在します。

というか、ポーカーの醍醐味のかなりの部分を、駆け引きが占めると言ってもあながち間違いではないです。感じ方はもちろん人それぞれですが。

 

「あいつにチップ取られたから取り返したい」

「あいつは自分にチップを取られたのを取り返したいと思ってるだろうからここはこうプレーしよう」

 

また、

「あいつはここまで全然ブラフをしていないから、ブラフをしない人の可能性が高い」

「ここまでブラフするチャンスが全く無くて、手固い人だと思われているだろうから、ストーリーのあるブラフをするチャンスがあればかなり成功するはず。そのチャンスを伺おう」

 

こういうのが駆け引きです。

しかし、こういう思考はAIは一切持っていないのです。

ではポーカーAIはどうやって勝つのか。

それは、わかりやすく説明すると

「ここで自分が持ちうる手はAとBとCとDで、相手が持ちうる手はEとFとGとH。ここでXドルのベットをY%で行うときの期待値を計算する。

それぞれの手を合計して、期待値が最大化するようなXとYの組み合わせを計算する」

という感じなのです。

これはわかりやすさを意識して説明結構飛ばしてますし、そもそも自分はAIの中身を見たことはないので何とも言えないですが、まあ大体間違えてないでしょう。

 

つまり、一回一回の手を単体で考え、他の手を持っているときとのバランス(ポーカーに於けるキーワード的なものです)を取る。その結果、最善のプレーは何かを計算するのです。

このAI的なプレーの背景には、一切駆け引き要素はありませんよね。それが

「ポーカーAIは駆け引きをしない」

ということなのです。いや、より突っ込んでに言うのであれば、

「ポーカーAIは駆け引きが出来ない」

とも言って良いかと思います。

ポーカーだって囲碁や将棋と同じゲームなのであって、確かに駆け引きをしなくても、ミスをせず淡々とプレーできていれば勝てるのです。

人間同士だと、将棋であっても、相手がXXという戦法が得意だから、あえて少し損をしてYYという戦法に持ち込もうとかあるわけですが、トッププロと同等やそれを超えるレベルになると、そんな駆け引きは必要ないのです。AIにはまだ不可能という以前の話で。

 

しかし、人間はAIよりずっとずっとミスをします。

あえて10のミスをすることで、相手から30のミスを引き出せるのであれば、むしろその方が得だったりもしますし、ポーカーのトッププロはその力にも長けてます。

ポーカーに限らず、人間同士の勝負はそういう駆け引きの要素がどんなゲームでもかなり大きく、それがゲームをより楽しいものにしているのです。