木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

3ベットするハンドとMDFと

コメントに、

「どういうハンドで3ベットすればいいか」

という質問を頂きました。

これってどこまで行っても難しい問題ですし、そもそも

「どういうハンドで3ベットすべきか」を聞きたいのなら、単にスノーウイーとかにかけてみれば良いだけなので自分がブログで解説するのも意味がないです。

 

ただ、それに関連して昔の事を少し思い出したのと、最近ちょっと話題になってるMDFというものについての考えを書きたいと思います。

 

 

自分がポーカーを覚えたのは2007年。

覚えた時に打っていたレート(0.5/1です。今からしたら信じられないかもですが、当時はこのレートも結構ぬるかった)。

戦略本もない状態で自分がどうやって色々プレーを改善していったか。

強いと思ったプレーヤーが打っているテーブルを何面か開いて見てました。

そのプレーヤーは、全員フォールドで回ってきたSBからレイズする時は2bbのミニレイズを使ってました。

自分が0.5bbを既に出しているので、フォールドするときと比べたら、1.5bbを追加で出して、自分の0.5bbとBBの1bb、合わせて1.5bbを取りに行くことになります。つまり、50%降ろせればOKです。

で、見ていて、それなりの頻度で降ろせていることに気づきました。

そこで

「全員フォールドで回ってきたら、SBから全ハンドでミニレイズしたら得じゃね(当時は+EVという表現はなかったです)」

と思ったのです。

そこで何をしたか。そのプレーヤーがSBで、全員フォールドで回って来て、ミニレイズしたハンドと、ミニレイズに対して相手が降りたハンドを手動で100ハンドほど数えました。

すると、60%弱ほど、ミニレイズで相手をおろせることが分かりました。

つまり、そのレートの平均的なプレーヤー相手には、23や27も含めて、すべてのハンドでSBから2bbにレイズすることが得だったのです。

それを使える状況は、自分がSBかつ全員がフォールドで回ってきた場合かつ相手に自分の戦略を知られていない場合、に限られるのですが。

 

ところで当時、日本の友人にすごく若い天才プレーヤーがいました。

当時は、3ベットはすごく強いハンド以外でやってはいけないと思われていました。

ボタンからレイズが入った時、SBからJJで3ベットしていいのかどうか、そんなことが真剣に議論されていた時代です。今なら当然3ベットですが。平均的な3ベット率は3から4%。

そんな常識の中で、その友人は、3ベット率15%ほどで3ベットしまくる戦術が得だと気づき、実行しました。

今から見るとやりすぎなのですが、広く3ベットされることに慣れていないプレーヤーは尽く彼にやられました。

当時は3.5から4bbにオープンすることが主流で、特にボタンの方が大きくレイズせよとされてたので、ボタンからは4bbが多かったです。

それに対し、SBから14bbの3ベットを打ちます。

13.5bbのリスクで5.5bbを取りに行くので、

13.5÷(13.5+5.5)=71%

ほど降ろせれば、すべてのハンドで3ベットすることは肯定されるのです。

そして、実際それは70%近くの成功率だったのです。

また、コールしかされない場合、フロップ以降でポットを取る可能性は十分にあります。つまり、3ベット自体がコールされてフロップに行った分のフリーロールに近い状態だったのです。

それ以外にも、今だったら当たり前と思うようなプレーですが、当時的にはすごく新しいプレーをたくさん見せてくれました。

残念ながらその天才の彼は、お酒とギャンブルの依存症的な要素もあり、プレーヤーとして日の目を見ることは無かったのですが・・・

 

 

ところで、話題になったMDFというものは何かというと、さっきSBからエニハンで2bbにした時、50%以上で降ろせるならエニハンで2bbにレイズすることが肯定されるという話を書きました。

逆に言うと、BBはエニハンレイズに対して50%以上降りると、相手にエクスプロイトされてしまうことになるのです。

なので、この状況のMDFの50%とは、50%以上でコール(かレイズ)しないといけないという数字なのです。ミニマムディフェンスフリークエンシー。最低でも守るべき割合、とでも言えば良いでしょうか。

3ベットの状況の話なら、MDFは71%ですよね。

冒頭の質問の話に戻って、自分はHUDに fold to 3bet の項目を表示させてました。

というか、HUDを使ってる人はほぼ全員が表示させてるとは思いますが・・・

これが65%を超えている人に対しては、すごく広く3ベットして行く、ということをやるようにしました。特にボタンやカットオフからのレイズに対して。ただ、それを狙っているとばれない程度、たまたまいい手がそこそこ入ったのかなと思われる頻度には抑えます。

一方、40%程度の人に対してはかなり絞って3ベットしてました。

 

結局、ポーカーは相手がどうプレーしてくるかによってプレーを変えるゲームなのです。ソルバーやスノーウイー的なプレーを学ぶことは大切ですが、そっちに寄りすぎてもいけない。

冒頭の質問をする人が平均的に見落としている考え方は、

「ポーカーは相手によって正解が変わるゲームである」

ということなんじゃないかと自分は思います。そこを意識するとプレーは少し良くなると自分は思います。

 

この記事の続き、MDFについて、ツイッターで結構見た誤解、について次回書こうと思います。