木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

トーナメントとキャッシュゲームのプレーの違いと理由

トーナメントとキャッシュゲームではプレーは異なりますよね?

そして、プレーが異なる理由、何ででしょう?

 

よく聞く答えとして

1、トーナメントは飛んだら終わりなので、オールインをコールするときは慎重に

2、トーナメントは飛んだら終わりなので、相手をカバーしている時はコールを増やし、相手にカバーされてる時はコールを減らす

3、トーナメントは飛んだら終わりなので、カバーしている時はオールインを積極的に仕掛けるし、カバーされてる時は慎重に

4、キャッシュゲームは負けても買い足せるので、相手はプレッシャーを感じてくれないからブラフは厳禁

5、キャッシュゲームは負けても買い足せるので、そこそこ勝つ可能性があれば突っ込んでも良い

6、トーナメントはICM的にバブルファクターがあるから、その分タイトに打たないといけない

 

 

 

ちがああああああああああああああう!

違います、トーナメントとキャッシュゲームで最も違う点、それは

・トーナメント(の序盤以外)はアンティがあって、スタックが少ない

これに尽きます。

ターボじゃない9人テーブルのトーナメントは、SBの1/4くらいのアンティがあり、平均スタックが30bbくらいです。

キャッシュゲームは、50bbなら一番ショートであることが多く、100bbが割と標準。バイインに天井がないところだと、500bbや1000bb持ちの人もそれなりにいます。

 

100bb持ちのキャッシュゲームを基準に考えることにします。

スタンダードなオープンサイズは、今は3bb。

その状態で、BBだけがコールして、フロップからリバーまで7割ベットをし続けた場合

フロップで6.5bbに対して4.5bb

ターンで15.5bbに対して11bb

リバーで37.5bbに対して26bb

合計で44.5bbをプレーすることになります。これだとオールインになりません。

 

一方、トーナメントだと、3bbにオープンしてBBがコールするとポットは3+3+0.5+0.125×9で7.625bb。

フロップで7割(5.5bb)打ったら18.6bb

これ、残り21.5bbなので、ターンはもうオールインしても良い金額です。

そう、キャッシュゲームと同じようなベットサイズをすると、アベレージ持ちのスタックでもターンでも自然にオールインになるんです。

 

でも、せっかく(特に強い手で)ベットするなら、リバーでオールイン判断を突きつけた方が得じゃね?

それなら、プリフロップで2.2bbにしよう。フロップとターンは4割にしよう。

するとリバーを、19bbのポットに、9bb弱を投入した状態で迎える事ができるのです。

ベット機会が多いので、途中で相手を降ろせばポット獲得です。

しかも、ポットに対してかなり小さめの金額をベットしていくので、ブラフの効率が良いです。

この考え方が「スモールボール」というやつですね。

また、一般的にはよく見る誤解1から3のために、途中で降りすぎる人が多いです。

キャッシュゲーム、さらにアンティがある状態で、ボタンが2.2bbにオープンしました。BBだったら、殆どエニーに近いハンドでコール以上しませんか?

でも、トーナメントなら結構降りますよね?

そして、そうやって降りてもらえるなら、小さく打つことは正当化されます。

また、小さく打っても降りてもらえるなら、高頻度で参加することも正当化されるのです。

 

 

トーナメントであっても、結局ポーカーはチップを増やすために頑張るゲームなのです。

決して、生き残るゲームではない。

もちろん、入賞直前でショートだったら、チップ的には行かざるを得ないハンドを降りることも出てくるでしょう。BFとかICMとか云々的な要素によって。

でも、多くの人はBFとかICMとかを過大評価しすぎています。

チップが増えてなんぼ、であることは変わりないのです。

 

戻って。

30bb持ちでアンティがあるキャッシュゲームだと、やはりオープンサイズは100bb持ちのアンティがないゲームより小さくなります。

アンティがないゲームは、スチールするモチベーションが非常に低く、それによってブラインド以外、特にアーリーポジションから参加するならかなり強い手を選ぶことになります。

以前も書きましたが、ポーカーの基本的な原則として、

「頻度が高いなら安く、頻度が低いなら高く」

というのがあります。100bbのアンティなしゲームのアーリーポジションはどうせ強い手しか出てこないので、絞って大きくレイズする訳です。自分は9マックスのUTGなら、オープンする際は4bbの方が良いんじゃないかと思ってます。

しかし、アンティがある30bbゲームだと、たくさん参加することになります。スタックが小さいので、小さいレイズで入ってもリバーでオールインまで届くから、小さめの金額で広く参加することが正しくなるのです。

また、それを受けたブラインド側も、3ベットしたりコールしたりで広くプレーすることになりますし、ある程度のハンドでオールイン勝負が多発することになるのです。

しかし、トーナメントに対する誤解のために、オールイン勝負にならなさすぎです。それは、そのことをよく理解しているプロが、より勝ちやすくなることに繋がるのです。

 

トーナメントは飛んだら終わりって言うけど、トーナメントで飛んだって別のトーナメントに出たり、キャッシュゲームを打ったりすれば良いだけです。飛んだって良いじゃないですか。

もちろん、トーナメントに出ている時間そのものに価値があると言うのはアマチュアの特権ですし、その価値観は否定しません。しかし、期待値という面だけから見ると、実はみんなが思っている以上に、「飛んだら終わりだから」というプレーの理由付けは間違えているのです。