木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

オーバーベットについて、前提知識編

最近、AIの進化によって、フロップでのポットオーバーベットを見かけるようになってきました。しかし、どういう状況の時にオーバーベットが有効なのか、非常に難しいと思います。そこで、例を出しつつ、解説したいと思います。

 

http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1702/03/news028_2.html

この記事は、2017年1月に行われたAI対人間のNLHEのHU勝負について書いた記事。ここでAIがしたオーバーベットについて書いてます。

記事は一般向けなので、せっかくなのでもっとポーカーをやる人向けに解説し直してみます。

 

200bbずつ持ち。プリフロップでボタンからAIが2.5bbにレイズ。人間がBBからコール。

フロップAQ8r (ポット5bb)

人間チェック。AIがベット20bb。

 

 

今回は解説に入る前に、前提知識についてお話します。

このハンドの解説については次回以降。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ところで、プリフロップでレイズした人がフロップでベットすることをCB(コンティニュエーションベット。日本語にするなら継続ベット)と言います。

ボタンがレイズ、BBがコール。フロップ289。BBチェック、ボタンベット、みたいなベットです。何故かと言うと、ボタンにはAAやKKが含まれるけど、BBには含まれない。AAやKKに勝てるハンドなんてそうそう入らないので、全然絡んでなくてもとりあえずベットするのは価値が高い。というのが元々考え方で、それ自体はそこまでずれた考え方ではありません。

しかし、AAですら現状ではワンペアであって、99、88、22、98には既に負けてます。非常に強いハンドではあるのですが、ナッツ級ではないのです。それでも、AAを持っていたら、フロップベットに相手が降りたら残念と思う程度には有利であることは間違いないですし、そういうハンドをレンジに含んでのCBは非常に価値が高いのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レイズサイズについて。

2008年くらいまでは、プリフロップのレイズ金額は3bbから4bbが標準とされていました。3bbだと小さいと言われてました。

その頃までは、3ベットはモンスターハンドでしかすべきではないというのが一般的な考え方でもありました。しかし、たくさんのハンドをこなすうちに、広いレンジでの3ベットの有効性に気づいたプレーヤーがどんどん3ベットをするようになります。そのプレーは(今となっては当然と思うかもですが)有力なので、たくさんのプレーヤーが真似をするようになりました。そして、2009年から2011年にかけて、どんどん3ベットをしていく時代に突入します。2011年頃は、やりすぎなほど3ベットが増えました。ライト3ベットですね。

ちなみにライトは、頻度が高いことを意味し、金額が安いという意味ではありません。勘違いしている人が多いので補足。

すると当然増えていくのは4ベットです。そして、当然のように5ベットも増えます。

 

次第に、コールするくらいなら3ベットした方が得なんじゃない?

3ベットにコールするくらいなら4ベットした方が得なんじゃない?

という風潮が出来上がります。そして、OOP(アウトオブポジション。ポジションがない場所のこと)からはフォールドオアレイズで、コールするのは良くないプレーだ、という主張をする人たちもかなりいましたし(ちなみに自分はそれには反対でしたが)、そこまで行かないまでもOOPからのコールはかなり少なかったです。

 

ところで、OOPからコールされないのであれば、レイズは小さくて良いですよね。

相手がコールしてこないのなら、スチールは2bbで十分です。小さくスチールすれば、3ベットされて降りるときの損失も少ないです。AAやKKが入っていたときは大きくレイズしておいたほうが良かったとは思うけど、でも3ベットされるのであれば4ベットすることで十分美味しいです。

 

そういうロジックで、プリフロップのレイズ金額は、2.5bbですら大きいという感じになっていき、2bbでのオープンがかなり流行ります。

 

ところで、3ベットについても同様のことが言えます。

OOPから4倍、IPから3倍が3ベットの基本的な金額でしたが、3ベットに対してもコールされることが極端に減って、4ベットオアフォールド、に近い状況になってきました。すると、IPから2倍、OOPから2.5倍くらいの高頻度の3ベットをする人が増えます。それでも結降ろせるので、もっと安くする人も登場しました。そして、頻度はどんどん高くなっていったのです。

具体的に言うと、アグレな人は6マックスで

VPIP/PFR/3b/4bレンジ、が28/25/15/12

というような感じですね。もちろんフロップ以降も安く高頻度にガンガンベットしてきます。

 

2013年くらいから、そういうオーバーアグレを食う戦略を取る人が増えてきます。

自分がまさにそうだったのですが、こういうオーバーアグレな人に対しては、実はコーリングステーションになるのがベストなのです。

金額が安いので、とにかく何かあれば降りる必要がない。モンスターハンドを持っててもレイズとのバランスを取りつつ、スローが有力。

 

そう、安いベットに対しては、高頻度でコールをするのが対抗戦術として有力なのです。そうして、コールをするプレーヤーが増えてきたことで、オーバーアグレなプレーヤーは次第に駆逐されていきます。

コールが増えてきたので、プリフロップの2bbレイズはかなり減ってきます。次第に2.5から3bbのレイズが標準になり、3ベットも8%程度に落ち着く、というのが今の状況なのです。

 

ところで、ベットやレイズの金額が安い場合の対抗戦略について歴史を見ながら説明しましたが、金額が高い場合の対抗戦略はどうなるでしょうか。

それは当然安い場合の逆で、マージナルなハンドでのコールを減らし、フォールドオアレイズ戦略を取ることなのです。

 

ここまでの話は主にプリフロップの話でしたが、金額の高い安いについてはフロップ以降についても全く同じことが言えるのです。だって、論理的には同じことですよね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

以上、CBの意味と、ベット金額についての話でした。