木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

ライブトーナメントのレイトレジスト

先週まで3週間、ロスに行ってきました。

キャッシュゲームにほぼ専念して、まあまあの戦績でした。

 

ライブトーナメントは大きいイベントで1万ドル級のイベントがたくさんあります。

WSOPのブレスレットイベントの多くは1000ドルから2500ドルで、それ以外にもサイドイベントもたくさんあります。

1万ドル級のライブトーナメントはトッププロも真剣に優勝を目指してきます。

その一方で、多くのトッププロは、かなりの割合でレイトレジスト、つまり途中参加するのです。

「トッププロなんだから、序盤のブラインドが小さい時から参加した方がよりチップを増やせて得じゃないか、何でレイトレジストしてエッジを減らし、よりギャンブルせざるを得ないスタックになってから参加するのか!」

という話題はしょっちゅう聞かれます。これについて書いてみたいと思います。

 

仮に10000ドルトーナメントに出たとしましょう。

今回のLAPCメインイベントなどがそれに当たります。

とあるトッププロAさんは非常に強く、ROI50%を出すことが出来ます。

ROI50%というのは、1万ドルトーナメントに無限回数出たとしたら、一回あたり5000ドルの期待値プラスになる、つまり、一回あたり15000ドルの賞金獲得が見込まれるのです。この数字は、WSOPメインイベント以外で達成するのは現状のポーカー界のレベルを考えると非常に難しいです。

さて、そんなトッププロAさんが、デイ1をスキップして、デイ2からレイトレジストして、40bbスタートでプレーしたとします。すると、ROIは確実に下がります。よりチップを集める可能性があるデイ1に出場しないので、出せるスキル差は小さくなります。とは言え、トーナメントのスキルエッジの多くは、中終盤で多くのプレーヤーが大きなプレッシャーを受けながらプレーする時に発生します。特に入賞直前とファイナルテーブルでは莫大です。

そう考えると、デイ2から出場しても、ROI40%程度以上はあるとみるのが自然でしょう。

つまり、デイ1をスキップすることで、10000ドルの10%、およそ1000ドルの期待値を失うことになるのです。

 

しかし!

このようなトッププロなら、キャッシュゲームをしてトップクラスの成績をおさめる事ができるのです。

こういうライブトーナメントの時は、キャッシュゲームも大きなゲームが動いてます。

自分が打てるようなステークスの25/50PLOくらいでも、強い人は長期間の平均で1時間あたり300から500ドルくらい勝ちます。今回のLAPC期間は、200-400のNLHEや200-400のPLOもたまにテーブルが立ってました。こういうテーブルが立つのはすごいお金持ちが現れた時だけなのですが、でも大体テーブルが立ちますw

そのお金持ちを狙った、そこまで強くないプロもそのテーブルに座ります。

そこで打てば、長期の平均で1時間あたり2000ドルから3000ドルくらいの勝ちを見込む事が出来るのです。

仮にデイ1をスキップしてデイ2から出たとして、そのデイ1の日にキャッシュゲームを10時間打てば、期待値で+2万ドルから+3万ドルくらい勝ててもおかしくないのです。

そうやってキャッシュゲームでお金を稼いで、ライブトーナメントにはレイトレジしてガンガンぶつける。飛んだらまたキャッシュゲームを打てばいいし、増えたらタイトル目指して頑張ればいいのです。そういうトッププロからすれば、1万ドルイベントのデイ1なんて打ってられないんですよね。レイトレジする方がずっと合理的なのです。

 

 

 

一方、これはキャッシュゲームでそれだけの勝ちを見込めるトッププロ限定の話です。多くのプレーヤーはキャッシュゲームでそこまで勝てないため、トッププロがいない序盤でチップを増やしておきたいと思うのもまた自然なことなのです。

 

特に多くのプロは1万ドルイベントをマークアップをつけてステーキングを販売して出場してます。

マークアップとは、1万ドルイベントを1%120ドルで売った場合、20%のマークアップという言い方をします。

20%のマークアップをつけて70%販売したとすると、全部で70%=8400ドルで売ることになるので、本人は1600ドルで30%の持ち分で出場出来ます。これは非常に得です。ミニマムインマネの19000ドルを獲得したとすると、その30%は5700ドル。1600ドルで参加してミニマムインマネでも5700ドルもらえるわけです。大きいですよね。

しかし、マークアップをつけて売るなら最初から出て欲しいと、スポンサー側は思うわけです。なので、そういうプロは序盤から出ることになるのです。